第五衝突 【154ページ】

ぎりぎりばれない場所だと思ってたんだけどな。梓兄さんの反応から見て、椿兄さんも気付いたのだろう。だからこそ、いつもと違う彼になったと。そう説明するのが一番良い気がした。



『えーっと…梓兄さん降りてくれないかな?』



どうして兄弟達に上に乗られているのか。話題転換を図ったのだけれど。



「名前、僕の質問に答えようか」



梓兄さんはだまされてなんかくれなくて。向けられている笑顔がとても怖い。諦めて私は白状した。



『…風斗です』

「ふぅん。やっぱりね」



やっぱりということは予測していたのだろう。まぁ、学校で、と考えると、私と絵麻、侑介、風斗になるから消去法で風斗しかいないのだけど。侑介がまさかこんなことできるわけないし。それに侑介がするなら絵麻にでしょ?させないけどね。



『ね?もう言ったし、降りてくれませんか?』

「駄目。消毒するから」

『え、何を…んっ』



唇をあっという間に奪われて。軽いリップ音と共に離れたと思えば、首筋に彼の顔が下りていく。



『あ、ずさ兄さんっ、いたっ』



チクリとする痛みを残して彼は顔を上げた。その表情は苦しそうで私は何も言えなくなってしまうんだ。



「ごめんね、名前」



どくんどくんといつもより早く脈打つ心臓に気付かないフリした。
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