第五衝突 【148ページ】
あっという間に夏休みも終わり新学期が始まった。今年は受験生が3人もいるから、と別荘へ行くのは流れていった。なんだか申し訳ないなとも思いながらもありがたかった。だって行くって知ったら絶対行きたがったし。
『ここはこの公式を当てはめて』
さすがの私も受験勉強というものをし始めた。今の成績をキープしておけば受かるという話だったけれど、大学に行ってからの苦労を少しでも減らすために。けれども引退したとはいえ、スポーツ推薦を受ける為、ほぼ毎日部活には顔を出していた。今までほど遅くまで残ったりはしなくなったけど。
『んー?これ分かんないや』
どうしても解けない問題が出てきて、絵麻に聞いてみようかと思ったけれど、部屋を訪ねても誰もいなかった。恐らく図書館で勉強でもしているのだろう。
『どうしようかな…侑介に聞いても分からないだろうし』
大分侑介の成績は上がっていた。けれども私の方が順位は上だ。リビングに行けば誰か大人がいるだろうと思ったのだけれど、誰もおらず私は項垂れていた。
「あれ、どうしたの?」
『祈織兄さんナイスタイミング!ちょっと分からない問題がありまして。教えていただけると嬉しいのですが…』
「いいよ。どれ?」
『これです』
「あぁ、この応用問題はこの公式を使って…」
『だからこうなるわけだね。ありがとう祈織兄さん!!』
祈織兄さんの説明は丁寧でとっても分かりやすかった。さすが祈織兄さん。
「うん。僕でよければいつでも力になるから。僕の後輩になるわけだしね。いつでも頼って」
『祈織兄さんありがとう!!』
頼もしい助っ人が増えた瞬間だった。絵麻や侑介に私のことで時間をとらせるわけにはいかないし。頭のいい人ってやっぱりすごいなぁ。
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