第五衝突 【147ページ】

一ヶ月の予定だった入院だけれど、少し延びてしまって、やっと退院となった梓兄さん。



「なぁ名前。一緒に梓迎えに行かね?」

『私も行っていいの?』

「駄目だったら誘わねーって」



そう言うので、私も行くことに。



「名前も来てくれたんだね」

『椿兄さんに言われてね。お邪魔だった?』

「ううん。そんな事ないよ。ありがとう」



入院中に読んだのであろう小説やDVD、着替えなどを手分けしながら整理していく。花束とかも沢山あって、どうやらファンの子から届けられたみたいだ。



「これで全部かな。椿、車に運んでもらえる?」

「うん、分かったー★」



私も荷物運びを手伝おうと思ったのだけれど、梓兄さんに止められて、病室は梓兄さんと私の二人きりになった。



「ねぇ名前」

『ん?どうしたの梓兄さん』



何の脈略もなしに、私は梓兄さんに抱きしめられる。



『梓兄さん…?』

「ごめん。君が忙しかった事は分かってるんだけど、久しぶりに会ったからさ。少しだけこうさせて」

『椿兄さんに見つかるよ?』

「…うん、でも少しだけだから」

『仕方ないなぁ』



競泳や進路のこと、絵麻のことでお見舞いに来たのは数回だけだ。自分があまり来れなかったこともあり、大人しく梓兄さんに抱かれていた。椿兄さんの足音が近づいてくるまでは。



「あずさー、名前ー、帰るぞー。…あ、でもその前に★」



丁度梓兄さんと距離を取った時に戻ってきた椿兄さん。何やら含みのある笑みを浮かべたと思ったら、今度は椿兄さんの胸元に私はいた。



「いくら梓でも渡さないから」

「上等だよ。僕もいくら椿でも渡せないしね」

「俺、負けないから」

「僕も簡単に引くつもりなんてないよ」



頭の上で交わされる会話。腕を引っ張られては椿兄さんと梓兄さんの胸元を行き来する。



『ちょっと2人とも…!!』



目が回るからそろそろ解放してください。結局、なぜか2人に両腕を組まれた状態で病院を後にした。どういう状態よ、これ。
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