第五衝突 【139ページ】

半袖でいても暑いと感じるようになった7月。期末テストも無事に終了し、後は夏休みを待つだけとなった。ま、私には大会があるから実感ないけど。そして大会が終われば三者面談で大体の進路が決定する。



『大丈夫、大丈夫…』



今年は絵麻にお守りを貰った。しかも手作りの可愛らしい感じのやつ。県大会でも活躍してくれたし、関東大会でも期待してるよ。それに持っているだけで心が落ち着いた。



『…っし!!』



ついガッツポーズをしてしまった。だって全国大会へのチケットを手に入れたんだもん。盛り上がっちゃって。



「名前〜よくやった〜!!」

「お姉ちゃんすごーい!!」



そんな大きな声も聞こえてくる。応援に来てくれるのは嬉しいけれど、自重してください、特に椿兄さん。全国大会の朝食なんてすごくて。朝からカツ丼が出てきた時には驚いた。頑張って全部食べきったけど。絵麻も右京兄さんも張り切ってくれて、その優しさがとても嬉しかった。

バクバクと心臓がいつもよりも速いペースで脈打つのが分かる。これが最後だ。泣いても笑ってもこれが最後の大会。心臓に手を当てて大きく深呼吸をする。大丈夫大丈夫。今まで必死に練習してきたんだから。その通りに泳げばいい。楽しく、そして速く。その瞬間青空が見えた。いや、フリーを泳いでいるのだからそんなはずはないのだけれど。私の視界には間違いなく澄み渡った青空が見えて。綺麗、だなんて思っているうちに競技は終了していた。



『…不思議』



まるで狐に化かされたような気分。でも意外と嫌じゃない。全力を出し切ったという感じがするからだろうか。ふと電光掲示板を見てみると日向名前1位と表示されていた。



『え………う、そ』



私は目を疑った。擦っても擦っても電光掲示板に表示されている文字は変わらない。



『……っ、やったぁぁぁぁああ!!』



初めてだ。全国大会という大舞台で初めて。私は優勝というものを経験した。フリーの100。そして200と2つもの優勝を手にした。バッタは残念ながら15位だったけれど。個人メドレーは4位で、かなりの好成績を残した。

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