第五衝突 【137ページ】
買い物をして家へと戻ると要兄さんと丁度すれ違う。
「お帰りー妹ちゃんたち」
「今からお仕事ですか?」
「そう、夜のお仕事。あーちゃんの様子はどうだった?」
『元気そうだったよ』
こんなチャラい格好をしていても兄みたいで。ちゃんと弟の心配できるんだ、だなんて思ってしまった。
「こーら。名前ちゃん失礼なこと考えてるでしょ」
『えへへ、ばれちゃった?』
「そこは否定してほしかったなぁ」
ぐすっと泣く要兄さん。嘘だって分かってるからね?服の袖から目薬らしきものが見えたし。
『要兄さん、そろそろ仕事に行ったら?ほら、絵麻から離れて』
絵麻をからかうのはいい加減やめてほしい。いや、楽しいっていうのは分からなくもないけどね?どうにか絵麻に泣きついている要兄さんを引き剥がして、エレベーターを待っていると、そこから降りてきたのはなんと椿兄さんだった。
『椿兄さん?どこ行くの?』
「あの、梓さんへのお見舞いは…」
「大丈夫、梓の見舞いには行く。でもやらなきゃいけないことがあるんだ」
そのまま椿兄さんはマンションを出て行ってしまった。
「…何だったんだろう?」
『うーん…でも、まぁ、大丈夫じゃない?あの椿兄さんの表情から察するに』
誰に何を言われたのかは分からないけれど、彼の表情には迷いなど見あたらなかった。多分、あの二人はもう大丈夫なのだろう。次に会うときには元通りの二人に戻っていますように。きっとその願いは叶うはずだから。
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