第五衝突 【131ページ】
「あ★名前〜ちょっといい?」
『どうしたの椿兄さん』
朝食を食べ終え、休日でも朝からある部活へ向かう途中、椿兄さんに止められる。
「俺、今度水泳もののアニメに出るんだよね。キャラ作りのために見学とかさせてくんね?」
『分かった。先生に頼んでみますー。あまり期待はしないでね』
「やった★じゃあ頑張ってこいよー名前」
『はーい。いってきまーす』
と言うことで監督に相談してみたところ、今週中ならいいぞ、その代わり撮影はなしだ。練習の邪魔にならないようにプールサイドでな。入ったり、何かしたい場合は自主練習のときに。とあっさり許可をくれた。その旨を椿兄さんに伝えればすごくよろこんでくれて。
「まじでー?行く行くー♪明日の5時から行くー★」
『分かった…から、離れて、椿兄さんっ』
いちいち抱きついてくる彼はどうにかならないものか。
翌日の放課後、5時。私はプールで水泳部としての活動を…しておらず、水着に上だけジャージを着てタオルを首から下げた格好で来るはずの椿兄さんを校門で待っていた。
『おっそいなー…』
季節はまだ春。気温も高くない中でこの格好は寒いのだけれど。監督に連れてくるよう言われたために、彼が来るまで大人しくまっているしかない。
「名前ー、遅くなってごめーん★」
『もう、遅いよ。椿兄さん』
彼が現れたのは10分後だった。どうやら仕事が押したらしい。なら仕方ないか、お疲れ様です。
『椿兄さん、昨日言ったとおりだけど、大人しくしててよね。自主練習になれば入って近づいてもいいから』
「ん。部活の雰囲気も見たいしオッケー★」
大丈夫かなぁ、と心配になったけれど椿兄さんは意外と大人しくプールサイドから見ていた。時々監督と話をしながら。
「今日の練習はここまで」
「「『ありがとうございました!』」」
今日はいつもより少し早めの7時に部活は終了した。多分、椿兄さんのこと気に入ったから彼のために時間を作ったのだと思うのだけれど。
『椿兄さんも着替えてることだし入る?何か泳いでほしいのあったら注文に答えるけど』
「ま・じ・でー?入る入るー★なら名前さ、背泳ぎしてくんね?俺の役、背泳ぎが専門なんだよー」
『了解』
専門じゃないというだけで、別にバックもブレも泳ぐことができる。
結局椿兄さんが満足するころには、いつもの時間になっていて。椿兄さんと一緒に帰る道はいつもよりも短く感じた。
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