第四衝突 【128ページ】
部活が終わり、携帯を見てみたところ椿兄さんからメールが届いていた。どうやら今晩は花見に決ったらしい。ここへ来るように、とご丁寧に地図が添付されてあった。
『行くしかないよね』
行かないと夕食もないみたいだし。
『お待たせ…ってもう出来上がっちゃってるじゃん』
公園にはお花見の人たちで賑わっていたけれど、目立つ人たちがいてくれるおかげですぐに見つかった。椿兄さんは何やら女子大生くらいの集団に紛れ込んで歌ってるし。家にはいないはずの棗兄さんもいるし。
「お疲れ様、お姉ちゃん」
『うん。あ、このから揚げ絵麻が作ったの?いっただきまーす』
から揚げから絵麻が作った味がする。他のはコンビニで買い揃えたみたいだし。
『おいしー♪やっぱ絵麻のから揚げ最高』
「ありがとうお姉ちゃん」
やっぱりこの妹は可愛らしい。うん。だから兄弟達にあげるつもりはさらさらない。
「…ったくいくつになっても騒がしいな」
「三つ子の魂なんとやらでしょ」
気持ちよさそうに熱唱中の椿兄さんを片目に見ながらその弟達はコメントする。よくあることなんだろうなとその様子から見て取れた。
『あれ、飲み物足りない?私買ってくるね』
このままいて、椿兄さんに見つかったら煩そうだし。ひとまず避難しようかなと思っていたので私は近所のスーパーへ向かった。
飲み物を買ってきて公園へ戻る途中、タイミングよく昴兄さんと会った。さりげなく荷物を持ってくれる辺り祈織兄さんとかと似てるんだよなぁ。
『ありがとね昴兄さん』
他愛も無い話をしながら昴兄さんと皆の元へ戻ると棗兄さんと梓兄さんに椿兄さんが絡んでいた。けれども私達の方を見てターゲットを変えたらしい。
「なんだ〜?二人一緒にくるなんて」
『たまたま会っただけですから。離れてください』
勢いよく飛びついてきた椿兄さんを引き離す。あぁ、ほら。隣と前からの視線が痛いし。だから嫌だったのに。
「あれ、弥知らない?さっきから見ないから君と一緒なのかなって思ってたんだけど」
『弥君ですか?見てませんけど…あ』
池のアヒルへと手を伸ばしている弥君を見つける。柵から身体を乗り出していて、今にも落ちてしまいそうだ。
「…チッ」
一番に反応したのは棗兄さん。弥君の元へと走っていくけれど、酔っていたからかバランスを崩して自らが池の中へと落ちてしまった。
「あははー何してんだよ棗ー」
そう言いながらも手を伸ばす椿兄さんに棗兄さんは手を重ねるけれど、彼はまた池に落とされてしまった。
「…椿」
棗は爆笑している兄の名を呼ぶが、そんなことを気にする椿ではない。諦めた棗は池から自力で上がってきた。
『大丈夫ですか?タオルどうぞ。びしょびしょよりはいいでしょ』
部活用に持っていたタオルを渡す。もちろん使用していないものを。
「棗。椿が悪ふざけしてごめんね」
「今日に始まったことじゃないだろ。アレは」
「うちでシャワーでも浴びてったら?」
「あぁ。そうさせてもらう」
棗兄さんは自分で頭やら拭いているから大丈夫だろう。服が肌にへばりついて気持ち悪いだろうけど、帰ったら急いでシャワーに入れば風邪は引かないはず。
『弥君、大丈夫だった?』
「うん、なっくんと違っておりこうさんだったもん」
『いい子だね』
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