第四衝突 【97ページ】
休日、私は駅の方へ出ていた。右京兄さんたちの誕生日プレゼントを買うために。クリスマスプレゼントも買わないといけないのでお金のある時に買っておこうという目的だ。
『それにしても』
絵麻のサンタとしてのプレゼントどうしようかな。いつも絵麻はサンタへ手紙を出していた。欲しいものをねだるために。でも今年は”私が好きなもの”と随分アバウトなものだったのだ。先程から店に入っては出、入っては出、を繰り返している。
雅臣兄さんには目覚まし時計。右京兄さんには紅茶セット。要兄さんにはホラー系のDVD。光兄さんにはマニキュア。椿兄さんと梓兄さんへは台本カバー。ローズピンクとターコイズブルーの色違いだ。棗兄さんはバロット・グリーン色のブックカバー。琉生兄さんには入浴剤。昴兄さんにはタオル。祈織兄さんには手帳。侑介にはゲームソフト。風斗にはヘッドフォン。弥君には気ぐるみパジャマ。絶対これ着た弥君可愛い!絵麻への普通のクリプレは手袋に決定し、そこまではあまり悩まずに買うことができた。けれど、サンタとしてのプレゼントが見つからない。どれもこれもパッとしなくて。お金も大分底尽きかけているし。
とりあえず一番買わないといけない右京兄さんの誕プレも買えたし。まだ1ヶ月ほど余裕あるから急がなくてもいいかな。時間があるかどうかが問題だけど。陽が傾きだして、そろそろ帰ろうと思った時だった。誰かに名前を呼ばれた。
「名前?」
声に反応して振り返ってみると棗兄さんがスーツ姿で立っていた。
『棗兄さん、今日も仕事?お疲れ様』
「あぁ。ありがとな。お前は今から帰るのか?送ってやるよ」
『ありがとう棗兄さん』
荷物が多かったから助かった。近くに車を停めていたみたいで、そのまま私は棗兄さんの車に乗り込んだ。
「大荷物だな。何買ったんだ?」
『んー、クリスマスプレゼントとか?棗兄さんの分もあるよ。クリスマスパーティーするんだって。棗兄さん来るんでしょ?』
「はぁ?聞いてないぞ」
『椿兄さんが棗兄さんも来るって言ってたよ』
「また椿の奴…」
『あははは…』
椿兄さん、また言ってなかったんだ。そういえば侑介にも私たちのこと伝えてなかったっけ。愉快犯だね、これは。
「…っと、電話だ。すまん、少し停める」
そう言って近くのコンビニの駐車場に停めて降りる携帯をとる棗兄さん。あまり聞かない方がいいかな。そう思って私はコンビニの中に入った。
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