▲hostage
『・・・・・・・・・最悪だ』
結局流されているじゃないか。兄弟とはシないって決めてたのに。
「最悪なんて言いながらも善がってたのはアンタでしょ」
『うっさい。きもちーのはきもちーの。頭撫でるの辞めてくれない?』
「はいはい」
『コーヒー淹れてきて。腰痛くて歩けない』
「我侭だなぁ。お姫様は」
光の分の布団も取ってベッドで丸まる。冷えは女にとって大敵だ。それだけじゃなくて、身体がだるいというのもあるけれど。
上半身だけ起こしてコーヒーを飲む。もちろんシーツで前を隠しながら。その様子をニヤニヤ見ている光が気に入らない。
『・・・・・・何?ニヤニヤ見ないで欲しいんだけど』
「さぁ?何だろうね」
仕事がなくてよかった。腰が痛くて動けない。少なくとも午前中はベッドでの生活になるだろう。
『携帯携帯・・・アレ?』
鞄の中に入っているはずの携帯が見当たらない。脱いだ服のポケットには入れてなかったはずだけど。どこいった。
『光、私の携帯知らない?』
「あぁ、これ?」
『ちょっと!何してるのよ!!』
ひょいと上に上げられた手の中には私の携帯が握られている。いつの間に取ったの、泥棒。
どうやら返す気はさらさらないらしい。人の携帯をどうする気なのよ。ちくしょう。
「あ。そうだ。アンタの家これからここだから」
『はぁ!?』
思い出したように軽々と言ってのける光。ちょっと待て。誰が承諾した。誰が了承した。私そんな事一言も聞いてませんが!?
口を挟まずにおとなしく聞いていると荷物はこちらが用意したと。部屋もきちんと用意してあるから今後はそこで生活しろと、簡単に纏めるとそんなことを言われた。大人しく聞くとでも思ってるのかしら。
「ちゃんと帰って来なよ。夜、ちゃんと帰って来なかったら・・・」
・・・人質は携帯ですか。個人情報とかもろもろ入っているそれを使われるのは都合が悪い。そんなものからメールを送ろうものなら私から送られたと誰しも勘違いしてしまうだろう。変なことばらされたくなければ大人しく聞けと。えー・・・
『・・・夜って何時までに帰ればいいの?仕事で帰れなかったときは?』
「仕事ならかまわないよ。でも嘘をつくのはやめておいた方がいいと忠告しといてあげる」
『・・・・・・・・・ありがとうございます』
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