▲necessity

「なぁ、なんでアンタ俺からの連絡無視するのさ」



仕事帰り。さて今夜はどうしようかななんて考えてたら会社の前で立っていた人物、光。



『別に。仕事忙しかっただけだし』

「嘘。今19時だけど」

『・・・・・・・・・携帯見てなかった』

「無茶あるだろ。さすがに」



何だ何だと通行人の視線が刺さる。ここじゃ駄目だ。場所を移動しないと。



『ね、光。奢ってよ。前連れてってくれたイタリアンでいいよ』

「名前・・・前連れてったイタリアンって高いんだけど」

『まぁいいじゃん。きもちーことしてあげるから』

「そのお代ってことか。逃げるなよ?」

『さぁ?余所見してたら逃げるかもね』



可愛くない女なんて笑って光はどうぞお嬢様と助手席を開けた。この車、真っ赤だし派手だから避けたいんだけど逃げ場なんてないし。私が大人しく乗り込んだのを見て自分も運転席に。久しぶりな気がするなー、この感覚。

光の家に連れ込まれそうな気がするなとか思ったけど大人しく以前に来たイタリアンに到着。逃げる気なんてもうないけどさ。信用されているのかたかを括られているのか。どちらでもいいけれど。

美味しいイタリアンにありつく。先程光が携帯に電話してくるからおかげで光からのものが非通知になることをバレてしまった。また連絡先を入れられちゃったし。今度消したら・・・辞めといた方がいいだろうなー。兄弟だから仕方ないと思っておこうか。



「それで。どうして俺の番号消したワケ?」

『兄弟なら面倒だから。それじゃ駄目?』

「口癖のようにソレ言ってたもんね。じゃああの時にアンタの中から俺が消えたわけだ」

『・・・・・・・・・』

「男として見れなくなったらさようなら、か。ひっどい女だね」



どっちが。ずっと気付いて言わなかったくせに。何を今更。

携帯が震える。光と話しているのに疲れた私は断りを入れずに相手を確認せずに電話を取った。

それは右京からの電話。絵麻がどうやら麟太郎さんとの秘密を知って家出をしたらしい。もう高校生でしょ。少し落ち着いたら帰って来るっての。とりあえず分かった、探してみるとだけ言っておいた。



『・・・聞こえた?』

「まー、だいたいは。アンタいいの?こんな所でゆっくりしてて」

『もう高校生だし自分でどうにかするでしょ。というか絵麻自身の問題だから私は知らない』

「冷たい女だな」



ハハッ、なんて笑ってるけど自分だって探す気がないのでしょう?私と話してる時点で私と同じだよ。



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