34

俺がマークしている2年生の前にピッタリ張り付き、パスが回るのを防ぐ。

もう息が切れていて走れそうにはないから、出来るだけ近くにボールが来るのは困る。


ボールは、修斗からガードの甘い修斗のチームメイトに渡る。


「……つか、れた…っ…!」

マークにつくので精一杯だが、それさえあちらこちらと移動されたらついて走るのも疲れが出る。


俺のマークがが遅れだした時、ボールが近くにいた2年生にパスされてくる。


気力を振り絞って踏み切り、思いきり手を伸ばした。



「………ッた…!」


バシッと手の平…というより指先に近いところにボールが当たり、ボールをカットできた。

剛が、俺が弾いたボールを上手く拾いドリブルで繋げた。


「ナイスカット、怜!」

「はは、ぁ……」


外からも歓声が上がる。そんなたいしたことでもないだろう。
そうは思いながらもほっと息を抜いた時、


「…えッ…!」


後ろからドン、と衝撃。

といっても敵チームの肩が少し強く当たっただけだけれど、力の抜けていた身体には少しの衝撃でもよく効いた。

足も耐え切れず、前につんのめる形になり。

「怜ッあぶねえ!」

剛の声がしたけれど、もうおそい。


(…コケる……!!)


体育館でも摩擦は軽い火傷の様に後でジクジクと痛みがくるから大嫌い。

傾く身体にギュッと目を閉じた。

その瞬間。






ガッ、と右腕が取られ、身体が後ろのめりに引っ張られた。

「………へ……?」

「……っぶねぇ…」



待っていた衝撃はなく、ゆっくり目を開くと誰かの腕が目に入る。
背中がポス、と誰かに預けられ引っ張られた右腕が離された。


そうしてやっと誰かに助けられたのだと理解した。



「す、みませ……っ!!ありが………」


慌てて身体を起こし、お礼を言おうと顔を見上げる。








「………ッかいちょ…」


「……チッ、…気ィつけろ」




舌打ちをし、固まる俺を置いて白熱の中に戻って行ったのは…修斗。


視界に剛からボールを奪う修斗が見え、そのボールがゴールに吸い込まれるのを痛む指先に気付かず呆然と立ち尽くしながら見ていた。



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