33
「…っは、…は…」
開始3分。もうすでにかなりきつい。相手の優勢から始まって、今点差は8点。
一人が一人をマークすればいい、なんて簡単な作戦しか組んでおらず、まして俺はシュートなんて打てないし。
「……あっ…!」
相手に抜かれ、ゴールにボールがサクッと吸い込まれる。
「クソっ………!」
舌打ちをする余裕のない剛は普段あまりお目にかかれないが、なんだか殺気立っている。
点差は10点。
「怜!」
ゴール下からの剛からのパスを受け取る。
「おっと、通さないよ?」
ドリブルで抜けて行きたい位置に相手チームがいる。
これ以上点差をひらかせたら後半でも取り返すのはきついだろう。
「………っ……!」
「はは、うろたえてる会計さまもかーわいッ」
俺を揶揄する言葉にムッとするが、反論するには体格差が違いすぎる。
俺の前にいるやつはどうみても俺より15cmは高い。190くらいあるんじゃねえのかってくらいだ。
身体もゴツい、なにかしらの運動部には入っているんだろうな。
ずっとボールを抱えていても弾かれて落としたら終わりだし。
「…ごぉーッ!」
いちかばちか、巨漢やろうの広げた腕の下を通って剛に向かって思い切りボールを飛ばす。
「ナイスパスッ!」
ボールを受け取った剛はそのままの場所からゴールに向けてシュートを打った。
ラインは、ゴール下の一番大きな線。
縁に当たり、くるくると縁を辿ったあとに、ボトリとゴールに入った。
「わ………スリーポイント……!!」
「…っしゃ!久々に決まった」
コート外から歓声が聞こえた。
駆け寄ると笑顔の剛が右手ハイタッチ。その姿にまたギャラリーが呻きをあげている。
「この調子で食らいついていこうぜ」
「うん………!」
笛がなり、再開の合図。ゴール下に、修斗が立っている。
(絶対とらせねぇ……)
修斗は、上手い。相手チームの得点の3分の2は修斗一人で得た点数だ。
逆に言うと、修斗がいなければまだ勝ち目はおおいにあるのだ。
(初めのパスを捕らせなければいーんだからな………)
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