32
コートを跨いで審判の生徒が立っている。みんなもう列に並んでいて、小走りでそこに加わった。
「…………!」
前を見ると、2年生はさすが、大きい人ばかりを集めたように見える。
その中の一人、修斗は隣にいる剛と向かいあっていた。
「お前ら、バスケか?」
「見りゃわかるでしょ」
修斗に荒々しく答える剛を見て、俺は内心ハラハラしていた。
元々仲が良いとは言えなかったが、この前の一件以降剛の修斗に対するあたりがきつい。
間違いなく俺のせいだろう。
口を挟むことなく、二人を見つめていると不意に修斗がこっちを見つめた。
「………なんですかあ?」
身構える様に少し強張った体は、自分の意思じゃない。そんな俺を尻目に、修斗は鼻で笑うように俺を茶化す。
「お前にできんのか?」
「………ッ!」
カァ、と顔が赤くなる。馬鹿にしているのだ、俺を。修斗は俺が運動苦手だと知っている、…まあ覚えているかは知らないが。
俺が体力がないとも昔はよく言われた。…それはもう思い出したくもないような記憶だが。
「…さ、あ…どうでしょお〜?運動は苦手ですけどッ」
羞恥と怒りを必死で抑える。周りにほかの人がいるのに、口論したくはない。
そんな俺を見て、つまらなかったのか修斗は不機嫌そうに俺から視線を変えた。
『……始め!』
そう掛け声があり、ジャンプボールに剛が前に出た。
その向かいに、また修斗。
まだ始まっていないうちから、コート外の歓声は凄まじい。
俺や剛がいるからだけじゃない、修斗も同じ試合にいるからだ。
修斗は学園の生徒会長で、こんなに嫌みで短気でもこの学園の誰よりも人気がある。
(取れ…剛……!)
身長はほとんど変わらない、強いて見るなら1、2cm修斗が高いかもしれないが、差ほど有利不利はないだろう。
ギュッ、と手の平を握りしめて、剛が弾いた時に取りやすい位置に移動した。
ボールが宙に上がる。
高く上がったそれが、叩かれた。
「……あ…………」
それを弾いたのは、僅かに早い修斗の手だった。
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