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「えーっと、多分二年だったと思うけど」
「ふむ……強いとこだと嫌だなあ…」
ハア、と溜め息をつくと、ひなちゃんが表を見てきてくれたようで。
「2の1だそうですよ」
「2の1って、副会長のクラスだっけー??」
そう剛に尋ねると頷いたけれど、何やら顔をしかめた。
「副会長のクラスってか……会長いるんじゃねーの?」
「…は?」
「最悪。優勝候補のとこだぜ」
今日、確かに修斗が何か種目にでているところは見かけていない。というか、探してもないけれど。
一度少しやる気が出てきたのが嘘の様に、気持ちが曇っていくのが分かる。
「…ご、ごぉ…俺やっぱベンチに……」
「分かるけど、それはダメ」
そう言われて、眉を下げ顔をしかめる。仕方ないのは分かっている。でもバスケといえば接触は避けられないだろう。
会うのは仕方がない。生徒会室に行けばいつも嫌でも会うんだし。
ただ、触れるのは怖い。
俺を押し倒したあの手が、怖い。
「嫌なのは知ってる。けどな、怜が気にしてるうちはどんなに頑張っても忘れられないだろ?」
「…………」
「意識しなきゃいけるから」
「…うん、そぉだね」
修斗を意識しないなんて、修斗に触れるより無理な話だ。
それでも、親身になってくれている剛のアドバイスを無下にすることはできない。
「……?…会長と怜さまって何かあったんですか?」
「…!いや、そうゆーのじゃないんだけどぉ…ね」
ひなちゃんがいることをすっかり忘れていた俺は、そうひなちゃんに突っ込まれ焦る。
「ちょっとケンカしただけぇ。気にしないで?」
咄嗟にそうは言ったが、ひなちゃんの表情は俺の言葉を信じていないらしく、訝しげだ。
ああもう、やってしまったと言い訳を考えていた時、甲高いホイッスルの音がした。
「怜、召集だぞ」
「あぁ、うんッ…」
剛に腕を取られ、先程むすりとした表情をしていたひなちゃんを見つめると、打って変わって営業スマイルのような可愛らしい笑顔を浮かべていた。
「頑張ってくださいね!」
「…ありがとぉ、頑張ってみるよー!」
俺がコートに向かったその瞬間、ひなちゃんの視線が向こうのコートに向いたのを、俺は知らなかった。
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