28
ダンダン、ボールを床にバウンドさせ、小柄な人がサーブを打った。
コート内に副会長らしい人は見えない。
「えぇと、ふくかいちょおは……」
…いた。
見ていたところのもう一つ奥のコート、体操服を着ていても何故か麗しく見える。
「おぉっ……」
「副会長普通に上手いじゃん」
近くに来たボールは全然落とさないし、アタッカーにもうまくボールをあげる。
レシーブの度に少し顔をしかめるのを見るとバレー熟練者ではないのが分かるけれど、バレー部と言われても疑わないくらいに見える。
仲間がボールを落としても全く咎める様子もなく、優しくフォローをいれている。
「頑張れ副会長ぉーッ」
そう声をかけると少しキョロキョロと辺りを見回し、俺を見つけるとニコリと笑った。やっぱり副会長の笑顔はなんだか癒される。
しかし、やはりコートの周りにあつまるギャラリーは否めないのか、副会長の応援は凄まじく多い。
「副会長さまあー!!」
「頑張ってくださぁいっ」
親衛隊か普通の生徒かなどは俺に分かるはずもないけれど、やはり副会長のファンはすごい。
あまりの副会長コールに相手のチームは軽く萎縮気味。
目立つのは嫌いだから口出ししないでおこうと思っていたけれど、あまりにマナーがない。副会長も好意であるがゆえ注意するに出来ないのだろう。
剛と顔を見合わせる。一般教養がねえぞみんな。
「ちょっと、もーおちょっとみんな静かにしようよぉー?ね、煩いと副会長の邪魔になっちゃうでしょう?」
すこし声を張り上げてそういうと、一瞬あたりがシンと静かになった。
「か、会計さま!!書記さまも……」
「こんにちはぁ、俺達も副会長見に来たのー」
「う、煩くしてごめんなさいっ!!」
なんだか周りにいる子たちが頭を下げてきた。
べつに謝ってほしい訳でも怒ってる訳でもないんだがな。
横で、剛はすこし驚いたように俺を見た。
「怜、目立つの嫌いそうだからそういうことしないと思ってた」
「俺、かーさんがそういうのは厳しかったからかなあ?しつけ?」
「意外」
「そぉかな?」
ピピーッとホイッスルが響き、点数ボードを見ると25対14。
副会長初戦勝ち上がりだ。
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