27
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「えー……只今より球技大会を………」
晴天の下、グラウンドでおじいちゃん校長がまたしても長話。
曇りならよかったのに太陽はカンカン照り。暑いけれど、焼けて後で赤くなるのが嫌いだから長ジャージ。
ちなみに生徒会は前にいなきゃいけないとかで、全校生徒に見えるような位置で立っている。仕種一つで声が上がるから、ろくに欠伸さえ出来やしない。
「んんん…………」
「もう少し我慢してくださいね」
ばれないように後ろにのけ反るとバキ、と骨が鳴り、副会長にばれて軽く笑われてしまった。
恥ずかしいな、もう………
「ごぉー、初試合何時からだっけー?」
「10時半ぐらいじゃなかったか?」
特になにもなく開会宣言も終わり、各種目に別れる。
チラリと体育館の時計を見ると9時30分。俺達のクラスの試合までまだ1時間くらいある、どこか見に行こうかな。
「ええと、副会長がバレーで美山先輩がサッカー……どっちか今やってるかなあ?」
「バレー、第一でやってるんじゃね?見に行ってみる?」
「うんっ」
第一っていうのは体育館の名称。つまり第一体育館。まあ第一とか第二とかは階のことで、四階建てだから第四まであるらしいが、第四体育館は体操部専用みたいになっているので使うのは第三まで。
「普通自分のクラスのとこ先に行くだろ」と剛に言われたけれど、ここ数日間ずっと美山先輩がよければ見に来てほしいって言うもんだから。
「嫌なら……いい、んだが」なんて言う先輩の頭に耳が見えたものだから、なんだか行ってあげたくて。
副会長も、手首の付け根辺りに青い斑点を作っていた。なんでも、クラスがやる気で放課後練習したりしているらしい。
先輩の白い肌に内出血の跡なんて似合わなすぎる。
でもみんな練習してるんですから僕も少しは参加しないと、なんて微笑む副会長に、俺は本当の天使を見た。
練習もなにもしないで運動出来ない、なんて愚痴を零す俺とは雲泥の差。
「あっ」
第一を覗くと、タイミングよく笛がなった。
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