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「まあ、いくら俺でもぉ次は庇ってあげられないから、今度はうまいことサボってねえ」
「はい、ありがとうございましたぁ」
まるで俺達がまたサボることを想像したかのような台詞だが、普段はそんなことしてないのに。
「風紀は授業中も見回ってるんですか?」
剛が委員長にそう尋ねると「今週は強化習慣だからー」と言われる。
「風紀委員が順番制で校内見回ってるんだよぉ。いいでしょ?授業サボれて」
そう俺に向かってウインクを飛ばしてきた先輩。だから俺は授業が嫌でサボったんじゃないって……
その時に授業終了のチャイムが鳴った。
「ほら、次の授業はちゃんと出てねえー、また捕まったら笑い事だよぉ」
ほらほら、と押されるように指導室を出され神崎先輩に何故か見送られる。後ろを振り返ると目が合って手をふってきたので、一応振り返しておいた。
「あの人のおかげで助かったな」
「本当だよ、委員長がいなかったら反省文貰ってたよねー」
タイミングは悪いとしか言いようがないけれど。結局屋上でまったりもできず、まあ仲直りはしたからよしか。
「ね、本当に黙っててごめんねえ………」
一応、と思ってそう謝り剛を見上げる。
もういい、とはいって貰ったけれど、虫が良すぎるのは嫌いで。
すると剛は、
「これはもう言いっこなしだろ?」
と言って俺の額に軽くデコピン。ほんの少し痛かったが、剛を見上げるとすっかりいつもの顔。
「剛かっこいいねえ、やっぱ怒った顔より笑った顔の方がいいよ」
「いきなりなんのお世辞だよ、褒めてもなにもでないぞ」
嘘ではないんだけれど、我ながらちょっと恥ずかしいことを言ったなと思ったから茶化してくれたくらいがちょうどいいかもしれない。
その時、一つ思いが浮かんだ。
剛に隠し事はやめよう、なんでも話せるしと思ったけれど、この話し方はどうなのだろうか。
これは作ったものだ。それも元々は感情を分かりにくくするために。
最近では自分でも案外板についてきて、違和感もさほどないくらいなのだけれど。
「あの……」
「ていうかさ」
俺が話し出そうとした時、剛の声がその上に被った。
「怜は怜だったのにな。例え怜が昔だれと付き合っていようと、俺と出会ったころの怜には関係なかった」
「……!」
「俺の怜はこの今の怜、今考えればそれでよかったのにさ」
そういった剛は、その後なにもなかったかの様に他愛もない話を俺に振った。
剛の中の「俺」は、いまのこの「俺」。確かにそれでいいのかもしれない。
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