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ガチャ、と音を立てて大きく開いた戸。
その向こうには。
「おっはろーん!!和泉くぅーん……って、あれー?」
「…………」
入ってきたのは、キンキンの金髪。
「……どちらさまですか?」
俺が呆気に取られていると、剛が変わりに聞いてくれた。
「うん?…君たちは……そっかあー…新しい役員くんたちだよねぇ?」
「はあ……」
扉が開いた時は、絶対に修斗が来たのかと思って、体が強張ったのが萎んでいくのが分かる。
そんな俺の心配など露知らず、しゃべり続ける来訪者。
「うんうん、講堂朝礼の時にちらっと見たけど、二人とも美人っ」
早口でまくし立てるようなその彼の口調に、俺も剛も固まってしまう。
俺より高い身長に、スラリとした好スタイル。
そして、お決まりの美形だ。そして、ひとつ違うのは。
(………チャラい…)
多分、俺なんか目じゃない。
ワックスで外に跳ねている髪。
腕を曲げる度煩く音をたてそうなブレスレット。ゴツい指輪。
「……こんにちはぁー…」
「えっ、なんで避けるのーっ!!」
キャスターの付いた椅子に座ったまま剛の机のところまで避難する。
だから俺、こーゆー人苦手なんだって。
端からみると同類かもしれないけどさ…
「あー、こいつ人見知りで」
「ふーん?俺怖いのかな??」
「ね、俺怖いー?」と聞かれるが、それに頷けたなら怖いものなしだろ。
「いやぁ、そんなことないん、ですけどぉ…」とそう言ってみたものの、言ってることとやっていることが支離滅裂。
「お前は、初対面の相手に、少しは遠慮しろ………」
今まで黙っていた美山先輩が、俺を見兼ねてか助け舟を出してくれた。
「よっしーは相変わらず厳しいなぁっ」
「お前にだけ…だと思うが……」
「なになに、よっしー俺を特別視してるの?」
「馬鹿、が………」
美山先輩の目が冷たい。
まるで哀れんでるみたいな。
彼にこんな口を叩けるこの人は、何者だ。
そう思ったときに、奥から副会長がひょっこり顔を覗かせた。
「五月蝿いですよ、神崎」
「和泉ーっ!久しぶりぃー」
「なに言ってるんですか、昨日も会ったでしょう」
「えー、そうだっけ?」
仲良さそうなのかよく分からない二人の様子に、剛と顔を見合わせる。
副会長と並ぶと、そのチャラさが際立つ。ただ、副会長に劣っているというわけじゃない。
かっこいいのは、かっこいい。
「あのぉ………副会長のお友達さん、ですかあ?」
俺が恐る恐る尋ねると、神崎と呼ばれたその人がこっちを見て首を傾げた。
「俺のこと知らない?」
そう聞かれ、首を縦に振ると「そっかそっかあー」と感心するだけ。
「あなた、まだ一度も顔見せしていないんですから仕方ないでしょう」
「だって、仕事ないんだもーん?」
仕事?この人も役員かなにかなのだろうか。
そういえば、神崎ってどこかで聞いたような。
すると、その人は俺と剛にウインクを飛ばしたあと、
「神崎健流、17歳でーす!よろしくねぇ?」
神崎健流、かんざきたける……。絶対に以前どこかで耳にした。
俺が必死に思い出そうとしていると、ツンツンと剛に脇腹を突かれて、耳打ちされた。
「……多分、風紀委員長じゃないか…?」
それを聞いた瞬間、思わず口から零れた言葉。
「……あれで、風紀ぃ………?」
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