5

※剛視点





怜が注文をしに向かい、その場には俺と副会長の二人だけ。

「そんなにずっと立っていないで、席におつきなさい」

そう副会長に促され、迷った末彼の向かいから一つずれたところに座る。
多分怜は副会長の近くに座りたいだろうし、俺も怜の近くを譲るつもりはない。


副会長と二人きりになったところで、特別に話す内容はないんだけどな。

そのまま黙っている俺に、副会長は箸を止めて話かけてきた。


「あれ、なんだか怒ってます?」

「別に怒ってないですけどね」

「僕が秋野くんが可愛いなんて言ったからですか?」


この野郎。
無礼ながら、一瞬そんなことを思ってしまった。
ふふふ、と上品に笑うその口から俺をからかうような言葉が出てくるのだから、質が悪い。



「分かってるなら聞かないでくれますか」

「おや冷たい。鳴海くんは僕のことが嫌いですか」


そっけなくそう返すと、副会長は悲しそうな顔をしたが、その声色はまったくそんな感じのない。

別に俺がそれに騙されると思ってもいなさそうなので、返事はせず。
そのかわり、まったくお門違いな文句をぶつけてみた。



「あいつ、初め生徒会に入るのものすごく嫌がってたんですよ」

「そうなんですか」

「それなのに、副会長に会ってからは入ってもいいかもとか言い出すし…」


まあ結局は入らないつもりだったみたいだけど、とは付け足さないことにしておく。

嫌だったのに押し切られて、なんて副会長にチクったら後で怜に怒られそうだしな……



「さっきも副会長を見つけた途端目ぇ輝かせて…」

「僕、懐かれてるんですかね」

「そうでしょうね」


楽しそうに笑う副会長を尻目に、俺の機嫌は急降下。
しゃべり方は同じなのに、怜に話す時よりもこの人の口調が嫌み気に聞こえる。
…俺も人のことは言えないけどな。



「怜くんて、見た目とのギャップがありますよね」

「あぁ、そうっすね。俺も話してて思います」

「服装や口調の割にはなんだかヘラヘラしてるようには見えないですし…」

「媚びないし、人見知りしますよ、アイツ」


俺が初めて話しかけた時も、なんだか飄々とした雰囲気を纏っていた。
普段はいつも笑ってるけどたまに驚くほど無表情の時がある。

俺には見せていないつもりなのだろう、怜の裏の表情なんだろうか。
あと、アイツが寮の自分の部屋で恐らく家族と通話しているんだろう時は、口が悪い。
悪いっていうより、冷めているというべきか。
こっそり聞き耳をたててしまったのは怜には内緒。


「副会長に会う時は、尻尾が見えますよ。しかもかなり振ってる」

「あらまあ可愛い、僕が飼ってさしあげましょうか?」

「冗談でも渡すわけないでしょう」

ニコニコしたままそんなことを言うんだから、この人は侮れない。
止めてくださいよ、と強めに出ると、おや怖いですねぇとまるで嘲るように笑われてしまった。




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