3


剛と話が盛り上がり、気がつくと食堂の扉は目の前。
休日の昼、外に出ている奴も多いだろう、そこまで人もいないかと思い、扉を押した。



俺達が食堂に一歩足を踏み入れると、ザワザワとしていた筈のそこが一瞬静まり返り、次の瞬間にはより騒がしくなった。




「……ねぇ、新しい生徒会役員さまじゃない…!?」

「そうだよ!お美しい………」

「滅多に食堂にはいらっしゃらないと聞いてたのに…」



あちらこちらから俺達についての話声が聞こえて、内心げんなりする。
だから嫌なんだ、ここは。
だが今の俺にはそんなこと言えるわけもなく、ヘラリと笑ってこっちを熱烈に見てくる奴らにヒラヒラ手を振った。


「見た!?会計さまが僕に手を振ってくださったの!」

「ちがうよ、僕にだもん!!」



「怜、ファンサービス精神旺盛なのな…」

「んー、まあねっ!」

したくてしてるわけじゃないけどな。



それでも少し時間をずらしたのもあり、ふだんより空席は多くある。
隅っこの方に座りたい。

俺が席を取りに向かおうとすると、剛に制止される。


「なあに?俺、あそこがいーんだけど、ダメぇ?」

「ダメっつーか…役員の席はあっちだろ」


言われて、ピシリと固まった。
そういえば、食堂の席も決められてるんだったっけ。

剛の指先には明らかに周りとは違う空間。
机からイスから、以前も思ったけど、最早差別的だ。だだをこねてみようかと思ったら、だれかが一人そこに座っている。



「あれは……ふくかいちょー…さま?」

「みたいだな」


離れたところからでも分かる、独特な麗しいオーラ。
いつも一人でご飯なんだろうか。たまたまならいいけれど、あんなに綺麗な人が一人だなんて。
副会長は、かなり好きだ。なんていうか、人として、いっしょにいると癒される気がする。
まあ、俺のガラじゃないんだけど。

自分でも露骨に気分が浮上したのが分かった。


「剛、向こう行こっ」

俺が剛の腕を引くと、剛は、

「怜は副会長好きなの。テンションあがっただろ」
と言う。


「分かるのっ?すごいねー剛」


そういうとすこし寂しそうに苦笑いをする剛。
向こうで食うと振ってきたのは剛の方なのに、なんだかすこし渋っている様。


「なになにー、どーしたの?」

「…怜、俺と二人の時より嬉しそうじゃん」


すこし拗ねたようなその剛の表情。
…一瞬キュンとしてしまった。

周りで聞き耳をたてていたらしい子たちが、奇声をあげさえしなければ、剛の頭に手を伸ばしていたかも。

なんか犬っぽかった、今の剛。
こう見えても、犬猫は結講好きだ。



「なにぃ、それ嫉妬?」


「さあな、ほらいくぞ」


俺が少し口端を上げて剛を見遣ると、罰が悪そうに目を逸らされ、ちょっと笑ってしまった。




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