39
ガラリ、と医務室の扉が開いてにそっちを見やると、体操着姿の剛。……まあ俺もだけど。
「剛!試合終わったの?」
「ああ」
「ごめんねぇ…手当てしてから見に戻るつもりだったんだけど…」
「いいよ、そんなの。指は大丈夫か?」
こくり、と頷くとよかった…と剛が胸を撫で下ろしたようで、心配してくれたのだと嬉しいような申し訳ないような。
いつもとなにも変わらない剛に、恐る恐る試合の結果を尋ねた。
「ご、ごぉ…!どーだった………?」
「あー……負けちまった。ボロ負けかな」
そういって眉を下げる剛。
負けてしまったのか…いや、仕方ない。俺もたいして役にもたっていないし、責め立てるつもりは毛頭ないし。
むしろ、ゲーム中の剛はいつもに加えて3割増し輝いていたと思う。
気休めの「お疲れ様」なんて剛も欲しくもないだろう。
「かっこよかったよぉ、剛」
「本当にか?」
「本当に決まってんじゃんっ!」
そう言うと、剛は珍しく照れを隠さないまま「じゃあバスケやった価値があったな」と笑いかけてきた。
その言葉の真意がイマイチわかんねえけど、とりあえず笑っておく。
すると剛の手が俺の頭に近づき、俺は反射的にじっとその手を待つ。
「……お二人は本当に仲がよろしいんですね」
その声が聞こえ、剛と俺の動きがピタリと止まった。
「ひ、ひなちゃん……」
「僕は蚊帳の外ですか?」
そういって笑うひなちゃん。確信犯だろ、この人。ぶわ、と顔が赤くなる。
まあこっちもまるで二人だけのようにふるまってしまったが。
「ご、ごめんん……」
「あれ、別にやめなくてよかったのに…」
「ったく……邪魔するなら初めからにしといてくださいよ」
剛が呆れたようにひなちゃんにそう告げた。
「ふふ……じゃあ僕はもう行きますね」
「あ…うんッ!手当てしてくれてありがとうねぇ」
「はい。じゃあ、また」
ひなちゃんが出ていき、医務室に残ったのは俺と剛の二人。
扉がしまったのを確認して、二人で苦笑いした。
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