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※剛視点
「ち…っくしょ……!」
完璧にガードしているつもりなのにするりと交わされ、また2点。
後半に入っても点差はひらくばかり。
むしろ皆疲れが出てきて動きが疎かになってくる。
それは相手のチームも同じだ。
でも、一人だけ秀でて俊敏に動きやがる。それは言わずもがな。
「会ちょ……強すぎだろ…」
「…こら、諦めんな…!」
弱音を吐くチームメイトに叱咤する。
初めから優勝なんて考えてはいないしどうでもいい。でも、ここまで点数が開いたままだと悔しいから、必死に食らいつく。
そんな俺に会長は呆れたように笑う。
「もういいだろ、そんなに守っても今更…一緒だろ」
「……俺のっ、勝手でしょ…ッ…」
ムカつくんだよ。その上から見下ろした様な態度も、馬鹿にするような口調も、昔の怜とのことも。
初めて見たときから好感度は低かった。顔だけが取り柄の俺様だと思ったからだ。
しかし実際は仕事もそれなりにこなし運動神経もいい、完璧人間タイプ。
それでも俺はこの人の口から昔の怜の話を聞いた時から、コイツが一番嫌いだ。評価は一気に地の底。
(怜…は、大丈夫なのか?)
軽い突き指だろうと、本人も言っていた。後半に出られなくなってごめんと申し訳なさそうに頭を下げて、自分の親衛隊隊長と手当に行った。
そんなことは対したことじゃない。
怜の指の支障が少ないことを願うだけだ。
それじゃない、さっきの………
怜を助けに行くには、俺は離れ過ぎてた。怪我を防げたのは安心はした。
だけど、どうだ。怜の腕を引いたのは誰だった……?
「会長っ……」
「……………」
「もう、…怜に構うなよッ…」
「なんで、お前に指図…されなきゃ、なんねぇんだ…」
お互い切れてきた息を整えながら、目が合い睨みつける。
怜の戸惑いは目に見えて分かりやすい。
コイツの仕種ひとつひとつが、怜を魅了し傷つけるんだ。
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