家で少し休憩をしているとカタと小さな音がした。どうやら玄関からではなく窓から侵入してきたらしい。 「まさか麗奈も同業だなんてよ…。出張多すぎだろとは思ってたけどよ」 『私も同じセリフを返すわ。仕事でほとんど家にいないじゃない』 「そりゃ世界各国飛び回ってたら帰りたくても帰れねぇさ」 『あら、帰りたいと思ってくれてたの?』 「当たり前だろ。ちゃんとした家があるんだ。それに可愛い嫁さんもいることだしな」 『ふふっ、じゃあこの家でちゃんとお終いにしてあげなきゃね』 バッと銃を取る。前は動揺していたけれど今度は大丈夫。たとえ左之助だとしても私は容赦しない。何をする時間も与えない。素早く狙いを定めた私は左之助に向かって銃を撃った。 『………ばいばい、ダーリン』 乾いた銃の音が響いた。これで終わりだ。…なんて呆気ない。左之助が倒れ込んだベッドを見る。死んだかどうか確認する必要があるからだ。彼に近寄った私の腕を取って彼は私をベッドに押し倒した。…形勢逆転。今度は私に銃口が向かってる。 『死んだふりなんてずるい…!』 「…麗奈、なんで前も今も頭狙わなかった。防弾ジョッキは当たり前だろ」 左之助が上着を脱げば現れる防弾ジョッキ。弾丸はそこで吸収されたらしい。左之助は乾いた笑みを浮かべながら、流石に衝撃は凄いから一瞬気を失うけどな、なんて。 …左之助だって前に逃げる私の頭狙ってなかったじゃん。頭狙ってたらあんな足元掠らないよ。…仕方ねぇだろ、お前の綺麗な肌に傷を付けたくなかったんだよ。 馬鹿だ。馬鹿だ。馬鹿だ。左之助は大馬鹿者だ。誰が自分を殺しかけた相手に傷を付けたくないだなんて思うんだ。恨みはあっても、そんな感情持ち合わせるわけがない。 『………優しすぎだよ、左之助は』 「良く言われる」 そっと左之助の顔が近づいてきて、私の唇と重なった。それはとても、とっても甘かった。 ← | Home | → |