出会った時から



私は裏の人間。ファミリーに属するマフィアの一人。主に近距離射撃を得意とする私。それからハニートラップかな。相手が男だったら私は自らの身体を差し出して情報を、命を手に入れる。

まーそんなわけで世界各国を飛びま回ることもザラにあるわけなんだけど。…あーあ、どうするかな。先程から一人で入る客を厳しく検査する警察がいる。どこからか誰かが狙われているという情報でも手に入れられたのだろうか。それを考えるのは私ではない。私が今考えるべきは警官にどうやって怪しまれないようにするか。なんて思っていたときだった。後ろからやってきた男に肩を組まれ、待ったかハニー?だなんてふざけたことを言ってきた。



『………うん。本当、タバコ吸うだけでどれだけ時間がかかるのかと思ったわ』

「わりぃわりぃ。ちょっと道に迷っちまって」

『…もう。私の欲しかったネックレス買ってくれないと許さないから』

「わーかったよ、ハニー。じゃ、明日にでも買いに行くか」



警官がこちらを向いていることを確認した私は彼の芝居に乗ることにした。警察が声をかけているのは一人でいる者のみ。先程までは私を怪しんでいた様子だけれど待ち人がいたのか、という表情に変わっていた。

そのままロビーにいても面倒だからさっさとエレベーターに乗り込む。彼の手は私の肩に、私の手は彼の腰に添えられたまま。



『…助かったわ。ありがとう』

「いや、こっちこそ一人だったから面倒だと思ってたんだ。良い女が一人でいてくれてよかったぜ。…ところで」



隣にいた赤い髪の男の瞳が変わった。まるで獲物を見つけた肉食獣のような。そうして背の高い男は私の頭の高さまで腰を曲げて耳元で囁いた。今日はこのまま予定あるか?と。

どうしようかと考える。目の前にいる男はイケメンの部類だろうし、着ているスーツもブランド物。うん、悪くない。明日の為の下見も済んでいるから何もすることが無いと言えば無いし。了承の意を込めて私は彼のネクタイを引っ張って唇が触れ合うだけのキスをした。



朝、誰かに見られている気配に目を覚ました。…あぁ、そうだ。昨日ナンパ男に引っかかることにしたんだった。名前、何だっけ…。



「おはよ」

『おはよう、原田さん』

「…昨日みたいに左之助って呼んでくれて良いんだぜ」

『………そうね。気持ちよかったわ』

「おいおい、返事になってねぇよ」



そのまま昨夜ベッドに脱ぎ散らかした服を着る。適当に髪を整えて化粧もささっとしてしまえば、少し手抜きだけれどいつもの私となる。



「なんだ、もう行っちまうのか」

『えぇ。少し予定があるの。じゃあね、左之助』

「…あぁ。じゃあな、麗奈」



そうして部屋を出て、烝君に連絡を取る。予定通り、今日行うよ。あぁ、分かった。ところで昨晩はどうしていた。通信に反応がなかったが。ごめんごめん、楽しんでた。そう言うと予想通り怒鳴られる。あぁ、もう。仕事はきちんと行うから見逃してよ。少し面倒になった私は、そういうことだから今晩よろしく!とだけ言って通信を切った。全ての手筈は整っているし、大丈夫。いつも通り私の仕事をこなすだけ。

さて、そろそろターゲットが来る頃かな。カツカツと良い女に少しでも見せる為にヒールをわざと鳴らしながら彼に近づいた。




- 1 -

← | Home |






×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -