ジャンケンポン







『…やっぱり20歳超えて処女はやばいかな』



ドロドロの恋愛ドラマを観ている時、知らない間に声が漏れたらしい。右隣にいた椿くんが反応した。



「え、瑠華って処女なの?」

『いや、まぁ、うん。彼氏はいたことあるけど最後までヤッたことない』



口から零れてしまったのは仕方がない。隠す必要もないと白状する。最初の頃…高校生の時に付き合っていた彼とそういう雰囲気になったことはあったけれど痛すぎて無理だった。多分ちゃんと愛撫はしてくれていたと思う。ただ私が感じにくい体質なのか気持ち良いとかなかったし、たいして濡れもしなかった。そんなのだから長続きしなくて。結局ヤれないからという理由で振られた。そこからはそんな雰囲気になるのを全力で避けていたらいつの間にか二十歳も超えた良い大人に。

処女は面倒だって聞く。そりゃ挿入する穴はあるとは言え硬く閉じられている其処をこじ開けようとするのだもの、異物感が半端じゃない。指だけでも変な感じなのに、穴を拡げるように挿れられるそれはかなりの激痛だろう。もしあのまま続けられていたら私はたぶん痛みで泣き叫んでいた。



「その彼がヘタクソだったんじゃないの」



左隣にいた梓くんも話題に乗ってくるようだ。私としてはこのまま流してくれた方が良いのだけれど。少なくともどちらかが飽きるか新しい面白い話題が出てくるまで、こんな地獄のような話題が続いてしまうのだろう。



『どうなんだろ…。1回ヤろうとして痛くてそこから全力で逃げてきちゃったから…』



ヘタクソだとか言われても、比べる相手がいないのだから分からない。その1回だけなのだ。他はせいぜいキスどまり。あ、胸を揉まれたことはあったけれど、それも触られてるなぁって感じで気持ち良さはなかった。

どうせなら処女で喜んでもらえる相手がハジメテだと良いな。面倒だなんて思わずに丁寧に愛撫してくれる人が良い。やっぱり痛いのは幾つになっても怖いもの。



「ねぇ瑠華」

「ここに瑠華の処女が欲しい男が2人いるんだけど」

『…もしかして私また声に出してた?』

「それはもうばっちりと」

「ちゃーんと大事にするし優しくするから安心して」



どさっと座っていたソファに押し倒される。え、本気?いやもう、椿くん、梓くんが良いなら貰ってくださいって案件ですけども。ただの慰めの言葉だろうと思って深く考えなかったのは間違いみたいだ。椿くんの顔が近づいてきて唇が重なる。テレビから出ているリップ音と現実のリップ音が重なった。



「…瑠華、ソファじゃ狭いからベッド行こうか」



椿くんをじろっと睨みながら梓くんが私の体を簡単に浮かせる。その細い身体のどこにそんな力を隠してるんだ。膝裏と背中を支えられてお姫様抱っこでベッドまで運ばれた。そんな梓くんは不機嫌気味。どうやら椿くんが私と先にキスしたのがお気に召さなかったらしい。



「梓もやればいーじゃーん。ちゃんと挿入は正々堂々決めるって」



あ、瑠華はどっちが良いとか希望ある?ないなら梓、ジャンケンね。なんて私が拒否するなんて考えもしないスピードで進んでいく会話。さっきのキスで抵抗しなかったからなんだろうけど。いや、あの美形とキスしてるって言うのに抵抗なんてできないって。むしろご馳走様ってくらいなのだから。一瞬目が合った梓くんも椿くんの時と同じように口づけを交わして。私の目の前ではどちらがハジメテをもらうかという勝負が始まっていた。





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