声を聞いて興奮した
頬にビンタ事件からさらに私と朝日奈さんは仲良くなった気がする。女装しているときは何でも相談できるお姉さんって感じで。男性の格好の時は………。もう否定できない。私は朝日奈さんのことが気になっている。
「……あぁん!」
不意に女の人の声が轟いた。あれから聞こえなくなっていたのにまたお隣さんから喘ぎ声が聞こえた。女の人は悲鳴に近い声を上げている。………朝日奈さんはどうやって女の人に触れるのだろうか。
ダメダメ、こんなこと考えちゃ。さっさと洗い物しようと立ち上がった時、脚の間から水音が確かに聞こえた。隣からじゃない、私の股から。
『……………』
大学の時に彼氏はいたけれど卒業前に別れた。今は誰とも付き合っていない。そーゆーこともご無沙汰だから、たまたまそんな気分なだけ、言い訳を並べながら私はシャツの裾を銜えてズボンの中に手を入れた。
瞳を閉じれば目の前には私の作り出した朝日奈さんがそこにいて。気持ちいいところを的確に触れていく。時折聞こえてくる喘ぎ声に合わせて強弱を付けてみたり。本当に触られているような錯覚に陥って。勝手に腰がヘコヘコ動いていた。強請るかのように動くけれど、求めるものが埋まることはない。
『んんっ、ふ、ぅん!』
<あ>に濁点が付いたような声でイッたであろう喘ぎ声の主。私もそれに合わせて激しくすれば爪先から頭までしびれるような快感が走った。
……びちょびちょになった床に手、全身汗ばんでいて気持ちが悪い。私、ついにやっちゃった。お隣さんで抜いちゃった。最悪だ。どうしよう。絶対に知られちゃ駄目だ。ふらふらとシャワーを浴びに行きながら私は罪悪感でいっぱいだった。
その翌日。私は運悪く朝日奈さんに会ってしまった。昨夜あんなことをした手前、変に意識してしまう。普段通りに、それを意識すればするほど逆に変になってしまって。朝日奈さんに問い詰められそうになって、私は仕事を理由に逃げ出した。
「あれ、顔赤くない?風邪?」
『ちょっと暑いだけです。大丈夫です』
頬の熱は中々冷めなくて。同期に誂われたり大変な一日だった。