「こんな可愛い子がお隣さんなんて」




引っ越しして5日。荷物もほとんど片付いて、一人暮らしにも慣れてきた。唯一困っていることと言えば、今のところ毎晩違う人の喘ぎ声が聞こえてくるくらいだ。一体、お隣さんはどんな人なのだろうか。

未だに挨拶も出来ていない。昼間はたいていインターフォンを押しても反応がなく、ガチャとドアが開く音がするのは寝る準備を済ませてから。今日こそは挨拶できるだろうか。



『…すいません、隣に引っ越してきた者ですが』



やっぱり駄目かぁ、部屋に戻ろうとした時にドアが開いた。中からは長髪の顔の整った男の人が出てきた。



「なーに、アンタ」

『少し前に隣に引っ越してきた愛唯と言います。これ、粗品ですが』

「ふーん………。朝日奈光、よろしく」

『よろしくお願いします、朝日奈さん』



ドアのさすがに初対面の人にあの時の声が煩くて睡眠不足だなんて言えない。毎日違う女の人を引っ掛けて、どれだけチャラいのだろうと思っていたけれど納得の顔面偏差値だった。自ら声をかけなくても女の人の方から声をかけてくるのだろう。来る者拒まずなのはどうかと思うけど。私が口を出すことじゃない。



「中々出れなくて悪かった。ちょっと仕事が忙しくてね」



家で仕事していたのか。ってことはいつも聞こえるドアを開ける音は女の人が来客した時ってことで…。朝は私が起きる前に出て行っているのかな。ドアの隙間から見てみても今は女の人の靴は無さげだ。あったらあったで、昨夜の声も聞こえていたから一方的に気まずく思ってただろうけど。そう思うと無くて良かったのかもしれない。



『いえ…こうして挨拶もできましたし、それじゃあ失礼します』



特に立ち話をするような間柄じゃないし、目的の挨拶は済ませたからさっさと帰ろう。朝日奈さんだっていつまでも玄関前にいられたら迷惑だろう。だから朝日奈さんがドアを閉める時につぶやいた言葉は私の耳に入ってこなかったんだ。




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