お隣さんと私



朝日奈さんの看病をした翌日、私も風邪を引くなんて漫画みたいなことはなく。無事に回復した朝日奈さんに約束通り買い物に付き合ってもらった。割とイイ感じなんじゃないだろうか、私と朝日奈さん。お隣さん以上、恋人未満の関係だと言い張りたい。



『え、お父さんが結婚する?いいんじゃない?今まで私達を育ててくれたわけだしさ』

「それでね、その結婚相手の方がマンションを所有してるらしくて、そこに家族が住んでるんだって。私達も一緒にどうかって…」

『そんなお金持ちの人見つけたの、お父さん。私は今の所が職場から近くていいんだけど』

「結婚相手のお子さん、男の子13人みたいで。家を出ている兄弟もいるって聞いたんだけど」



そんな男の子の中に私一人じゃ不安だからお姉ちゃんも一緒に来てほしい、そんなことを妹の絵麻が言うので私は仕方ないなと1年だけと条件を付けた。それでも良い、お姉ちゃんとまた一緒に住めると喜ぶ妹に、家を出たのはやっぱり可愛そうだったかななんて思った一瞬。それよりスルーしちゃいけない言葉があった。



『ねぇ、13人兄弟って言った?』

「うん。朝日奈さんって言うんだって」



………あぁ、うん、これもう間違いないじゃん。完全に朝日奈さんのお母さんと私のお父さんの結婚だ。私、好きな人と兄妹になってしまう。朝日奈さんは知っているのだろうか。日向姓は多いわけじゃないけれど珍しいわけでもないから気づかないか。

朝日奈さーん、私達、兄妹になるんですって。は?朝日奈さん、お母さんから何も聞いてません?私の父親と朝日奈さんの母親が結婚するらしいですよ。…何も聞いてない。じゃあその内連絡が来るかもですね。



『それで妹が一緒に住みたいというので、ご実家の方にお世話になることになりました』

「この家はどーすんの」

『1年間住みもしないのに家賃払えませんからねぇ。引っ越します』

「…そう。隣がアンタで良かったのに」

『私もお隣さんが朝日奈さんで良かった』



あ、朝日奈さんって言うのは変か。朝日奈光さん、光さん。こんなことで呼び方が変わるだなんて思いもしなかった。義理とは言え兄妹の関係になるなんて思いもしなかった。



「じゃあ、家族としてこらからよろしく」

『こちらこそよろしくお願いします、光さん』



義理の兄妹とお隣さん、距離はどちらの方が近いのだろうか。これから私を取り巻く環境は大きく変わる。少しでも良い未来になれば良いけれど。『私』と『お隣さん』の関係はここで一旦区切りがつくこととなった。





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