「おせぇよ朝日奈ぁ〜」
「ごめんごめん、仕事が入っちゃって」
久しぶりに高校生の皆で集まろうと誘われていた僕。仕事が遅れたため、僕は途中参加となった。クラスメイト達は半分くらいが出来上がっている。
『あ、久しぶり梓〜』
「久しぶりだね名前」
開けてもらった席に座ると、その隣には名前がいた。彼女は他の女の子達とは違って、僕自身を見てくれた。椿と一緒の学校だったから珍しい双子だと騒ぐ子や、ある程度整った顔に近づきたいといった子が多い中で彼女だけが梓、と呼んで僕自身を見てくれていた。僕にとって唯一の女友達だと思う。学校を卒業してからは彼女が働き出したため時間が合わずに名前と会うのは数年ぶりだ。
『梓の活躍知ってるよ〜、椿と一緒に頑張ってるみたいだねぇ』
「知ってたんだ。うん、そうだね。頑張ってるよ。名前は仕事の方どうなの?」
『うーん……ぼちぼち?任される仕事の量が増えて大変かなぁ』
名前と話している間に頼んでおいたビールが来、僕もお酒を体内に摂取していく。同窓会は一次会、二次会と続き、日が変わる頃に解散となった。けれど。
『梓、もう少しだけ飲まない?サシでさ』
「いいよ。久しぶりだもんね。とことん付き合ってあげる」
『私が梓に付き合うんですー』
「はいはい。そういうことにしておこうか」
ということで二人でまだ飲むことが決定。明日に仕事が入っていないし問題ないだろう。めったに合えない名前とだ。もう少し楽しもうと思ったのかもしれない。僕達は近くのバーへと足を踏み入れた。
それから大分経って。気がつけばお互いベロンベロンに酔っていた。思考回路なんてまともに回っていない状況。そんな中で名前は冗談交じりに言った。
『実は、私、梓のこと好きだったりしたんだよね〜』
「え…」
『もう時効だろうから言っちゃうけど〜』
僕の頭が急激に冷えていく気がした。
よく僕達はからかわれた。僕が名前以外に仲の良い女の子を作らなかったから。椿もよく聞いてきていたし、噂も聞いていた。直接聞かれることもあったけど、互いにないない、と否定していたはずだ。
けれど。数年ぶりに会った彼女は綺麗な女性になっていて。僕の心がときめいたのも事実で。また会いたい、なんて思っているのも事実で。その言葉が嬉しいのも事実で。理由は、全ては一つに繋がっている。あぁ。明白で簡単な答えじゃないか。
バーを出た僕達は、お互いを見つめ合って。夜の街へと姿を眩ませた。
『………ん』
「おはよ。腰、大丈夫?」
『おはよー……』
ふにゃと笑った名前の顔。とても妖艶で可憐なそれに魅入ってしまう。
『ねぇ梓』
「ん?」
ベッドに寝転ぶ名前の元へ水を届け、耳を傾ける。
『好きだよ。ずっとずっと好きだった』
「うん。僕も好き」
『知ってる。ずっと囁いてくれたもん』
「…酔っ払ってるんじゃなかったの?」
『まさか素面でなんて言えないもん。酔っ払ったフリしただけ』
さすがの僕も面を食らった。確かに酔っ払って覚えていないなんて言われたらどうしようと思ったけれど。
『声優だませるなんて。私って結構演技できちゃうのかも』
あはは、と笑う名前。僕は何だか騙された気分になって。不意打ちに彼女の唇を塞いだ。しかも大人の、ディープなやつを。
『なっ、なななっ…!?』
「ふふっ、真っ赤になってるけど?演技しなくていいの?」
『もう!!』