締め切り前。
名前を放っておいたのが悪かった。俺以外の奴と飲むなって言っておいたのに、名前は友達と飲んでくると書置きだけして出て行ってしまっていた。
俺はと言うとパソコンに向かっていて、まったく名前が出て行ったことにさえ気付かなかった。名前が出て行ったのはきっと数時間前。今更追いかけても意味が無いだろうし、連絡してもきっと気付かないだろう。悔しいけれど名前からの連絡を待つしかない。
「………チッ」
とりあえず終われば呼べというメールだけはいれておく。何もしないよりはマシだろう。気付くか気付かないかは別として。
『あ〜ひかるさんだぁ〜きゃははは〜』
満面の笑みを浮かべる名前。やはりというか、書置きに気付いてから数時間後に電話があった。名前からではなく、親友だと名乗る今井真秀子に。片目で名前を見やりながら光は礼を告げる。
「悪かったな。名前が迷惑かけて」
「いえいえ、半ば無理矢理飲ませたのは私ですので」
ほんわかした子かと思えば、意外としっかりした子らしい。だが酔っ払っている名前の世話は大変だっただろう。何をし始めるかわからない。下手に止めようとするならば、泣き始めるからタチが悪い。家ならともかく、店の中で騒がれたらたまったものじゃないだろう。
『あっつい…』
家に着くなり名前は光が止める暇なく上着を脱ぎだした。明るい部屋の中で脱ぐだなんて名前にはありえないことだ。それほど酔っているという証拠なのだろう。
「こらこら。皺になるだろ。ちゃんとハンガーにかけろって」
なんて言ってみるも酔っ払いには何の意味も無いことを知っている光は名前の脱ぎ捨てた上着をハンガーにかけ始めた。が、そうする内に名前はどんどん衣服を脱ぎ捨てていく。パーカーにTシャツ、短パンも脱ぎ捨てて、残ったのは下着のみ。
「あれ、名前、それ新しい下着じゃん」
『あー……ちゅーくんに言われて買っちゃったー』
「へぇ椿が、ねぇ」
自分で聞いたものの、名前の口から他の男の名前が出るのは面白くない。たとえそれが他の兄弟達だとしても。名前を狙っている輩は沢山いるのだ。
自分が不機嫌になったことにも気付いていないだろう名前を抱き寄せてキスをする。後頭部を押さえ込んで逃げられないように。軽く開いた唇の間から舌を侵入させて、名前の歯列をなぞり舐め、舌を絡めあう。キスでいっぱいいっぱいになっている名前のブラのホックをいとも容易く外してしまえば。
「俺の知らない間に椿と買い物なんか行った罰、ちゃんと受けてもらうから」
脱いだのは名前だからな。誘ったも同然だろ?