01. 香織と俺、それから千鶴は所謂幼馴染ってやつ。香織と俺の家は隣同士、千鶴の家は俺の家から二軒挟んだ所にある。家が近く、同級生ということもあって仲良く遊んでいた。 そんな俺たちも高校生となり、離れるかと思いきやまさかの三人同じ学校。元男子校である為に女子が入学したがらず、入ったのは千鶴と香織の二人だけという。正にマドンナ的存在になっていた。可愛らしい顔立ちの千鶴と大人っぽい綺麗な顔立ちの香織。俺たち男の好みは完全に真っ二つだ。 いいよなぁ平助は、なんて言われ慣れたもの。へへっいいだろ、なんて軽く流してた。そんな二人だからあっと言うまに恋人が出来て。平助も早く作りなよ、なんて言われてた。 『平助ー、一緒に帰ろう』 「いいけど、一君は?」 『今日は進路相談で遅くなるから先に帰っておいてくれ、だってー』 「分かった。千鶴は?」 『千鶴も一緒!久しぶりに三人でね!』 香織の彼氏は俺たちの一つ上の一君。俺が昔通っていた剣道場にいた仲間の一人。他にも総司や土方さん、近藤さん、皆がいて驚いた。この学園に皆集まってるらしい。すごい偶然だろ?そいつらと香織と千鶴は面識があって、二人はマネージャーとなったんだ。俺が知らない間に香織は一君と、千鶴は土方さんと親密になってたなんてな。香織はいいけど、千鶴は公に出来ない関係だから特に悩んでる。香織みたいに一緒に帰ることは出来ないし、デートだって気を遣うと嘆いていた。 三人揃って帰るのは久しぶりなんだ。香織がいないことが多いから。 千鶴、香織、俺の順番で並ぶ。昔からこうだったからかこの並びがしっくりくる。 「香織、一君」 『え、あ、ほんとだ。一先輩頑張ってくださいね!』 帰り際、窓からこっちを見る視線に気がついた。一君だ。香織に教えてやると彼女は振り返って大きく手を振る。その姿に照れたのか一君は軽く手を振った後そそくさと隠れてしまった。その姿を愛しそうに見つめる香織。その俺の見たことのない表情に心臓が跳ねる。あぁ、気付いてしまった。知りたくなかった。こんな感情、実りなんてしないのに。 「よく気がついたね平助君」 「なんとなく視線を感じてよー」 『平助にはゴリゴリ君を送ってやろう!』 「もう冬だっつーの!風邪引かせる気かよ!それだったら肉まんだろー」 「そうだね、最近寒くなってきたし。肉まん半分ゲット♪」 「え、それ俺の肉まん!!」 『誰も肉まんを奢るなんて言ってませんー!』 きゃー!ぎゃー!コンビニまで走れー!と笑いながら駆ける。こんな関係でよかったのに。 ×
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