『くしゅっ』

「寒いか?俺のポケットに回路入ってるが使うか?」

『え、いいの?』



ズボッと俺のコートの中に手を入れる名前。すかさず俺もポケットに手を入れる。そして彼女の小さな手を握れば赤く染まる名前の頬。



『え、あの、棗君、何して………』

「ん、なんだ?」

『手を!離してほしいんだけど!』

「…お前は嫌か?」



かがむようにして上目使いした俺の顔が名前は好きだって知ってるぞ。ほら、これがいいんだろ。



『……棗君はずるい』

「名前が手袋してこないからだろ」

『急いでたから忘れただけだもん』



ははっと笑って誤魔化して、握り返された手をさらに強く握りしめる。

確かにいつも待ち合わせの10分前には待っている名前が今日はいなかった。だからといって時間ちょうどに来たから遅刻というわけではないが。

白いロングコートにスラッと伸びるタイツを履いた足。ショートブーツは最近買ったと言っていたものだろう。マフラーも手袋もしていない格好を見て、貸した方が良いんじゃないかとも思ったが少し名前に我慢してもらってよかった。こうして手を繋ぐ理由ができたわけだしな。



『…?』



俺の視線に気づいた名前がどうしたの、と問う。その仕草がなんだか可愛くて、つい、キスをしてしまった。



『な、なつめくん…!』

「誰も俺らなんて見てないさ。そもそも人通りも少ないしな」

「へぇ。誰も見てないねぇ」

「もっとちゃんと周り見たほうが良いんじゃねー?2人の世界に入ってないでさ」



聞き慣れた声が耳に入った。間違えるはずがない。ずっと一緒に暮らしてきた兄弟の声を。



「椿!梓!」

「やっほー、名前」

「せめて場所くらい考えなよ」



俺に構わず名前の手を取る椿。梓はそんな椿を止めることもなく、俺に厭味ったらしく呆れた口調で言う。相手にしてられるかと俺は名前と繋いでいる椿の手を払い間に入る。



「羨ましければ2人でずっとくっついてないで彼女作れ」



名前を抱き寄せて、双子の兄たちに見せつけるようにキスをした。ひゅ〜と口笛が鳴ったと思えば次に頬に痛みが走る。



『………棗君のばかっ!!!!』








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朝日奈棗と甘々とのことでしたが、これは甘いのか…?
もっとイチャイチャさせようと思ったのですが、裏になりそうだったのでボツになった結果、このような形になりました。

書き直し等、ございましたらご連絡いただけると修正致しますので!この度は企画参加ありがとうございました♪



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