身体を重ねてから、私と棗の関係は確実に変わった。仲の良い同期からセフレに成り下がった。
心が触れ合うような温かさは私と棗の間にはない。ただ気持ちよくなる為だけの、性欲発散の為の行為。そんな関係になったにも関わらず浅ましい恋心は消えることなく、私自身持て余してしまっていた。
『あれ、棗いないじゃん』
定時ちょっと過ぎに仕事を終えて電車に乗って夕食の買い物をして、棗の家に来た。少し前にもらった合鍵でドアを開ければ棗はまだ帰っていなかった。まぁいいや、と勝手を知る台所に立つ。夕飯を作っている間に帰ってくるでしょ。
完成、と仕事終わりだからそこまで手の凝ったものはできなかったけれど料理はできた。なのに棗は帰ってこない。あれ、連絡きてた?携帯を見るとメールが届いていた。
『………今日は残業するから来なくて良いぞ』
受信時間を見ればちょうど買い物をしちえる時に届いたらしい。全然気づかなかった…。さてどうしようか。作った料理は二人分。材料費を出している以上、一人分は食べていいだろう。残った分は冷蔵庫に入れて棗にあげよっと。
せっかく可愛い下着付けてきたのに。なんてふてくされてみる。そんなことをした所で何も変わらないのだけれど、1つ悪戯を思いついた。
『やば、ちょっと恥ずかしい』
さっさと自撮りして棗に送りつけてやる。ブラとショーツと、はだけさせた棗のシャツ。それだけを身に着けた私はベッドで写真をパシャリ。これで少しは困ればいいんだ。私ばっかり好きなんだから。
メールを送信して1分後、服を着ていたら着信音が鳴り響いた。
『もしもし?』
「おい、何だあれは」
『残業がんばれーって。メールに書いたじゃん』
「今もその格好か?」
『そんなわけ、』
「すぐ終わらせるから、そのまま待っててくれ」
今日はもう変えるよ、なんて言う暇もなくピッと通話終了になってしまった。えぇー…、あれは一人で悪戯しようと思ったから着れただけで、生で見せるためじゃない。あんな食べてください、みたいな格好ができるほど私は可愛げがあるわけじゃないんだ。
………服をまた脱いで棗のシャツを着る。恥ずかしいからボタンは全て閉じたけれど、他に身につけているのは下着だけだ。
『不毛だなぁ』
今更棗の心が欲しいなんて口に出せない。でも身体だけでいいなんて思えなくて。棗が少しでも欲を抱いてくれたことが嬉しくて。
どうか次にオムライスを食べるときには心が通じ合ってますように、なんて恋する乙女のようなことを祈ってしまった。
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shihobear様、20万打へのリクエストありがとうございました♪
いつも楽しみに待っているとのこと大変励みになります!ありがとうございます^^
短編「彼との事情」の続きということでしたが、いかがでしたでしょうか?
頭の中で続編を作っているとのことだったので物凄く悩んで出来た作品となりました。
書き直し!という場合はメールや拍手からご連絡ください。
これからも「愛して」をよろしくお願いいたします!
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