『…一くん』

「名前、また眠れないのか」

『うん、ごめん』



池田屋事件から数日。私は夜な夜な一くんの部屋へと通っていた。

眠ろうと布団に入り目を閉じれば浮かんでくるのは血まみれになった浪士の姿。ぼろぼろで血生臭さくて、すぐに死んでいく名も知らない人たち。池田屋に着いて行くと決めたのは私だけれど判断を誤ったのだろう。あの光景がこびり付いて、あの時私の元へ這いずって命乞いをしてきた人の顔がいつまでも忘れられない。

ただの女中には刺激が強すぎた。夜風を浴びようと屯所内をうろうろしていたところ、見廻りから帰ってきた一くんに見つかって。なんだかどうしても人肌寂しくて、そこから身体を重ねるようになった。ん、と腕を伸ばせば一くんは屈んでくれて。ぎゅっと抱きしめるとほぼ同時に中に入り込んでいる男根が奥を突く。とんだ荒治療だと思う。だけど今の所これが一番効果的なのだ。



『っ、んぁ…ふっ、ぅん………』



静かな屯所内に声が響かないように唇を噛む。一くんがそれを咎めるように指を口元に持ってくるので、代わりに指を舐めて誤魔化す。熱棒にするみたいに指先から指の間まで丁寧に舐めれば、膣内に入っているそれが少し大きくなった気がした。

大きくしないで、その意味を込めて睨んでみても何も効果がない。むしろあんたが悪いと言わんばかりの一くん。初めて身体を重ねた時は初心で可愛かったのに、とっくに慣れてしまった彼はただただ雄の表情をしている。胸の飾りを弄びながら腰は止まらず。繋がっている箇所は互いの体液で湿潤だ。



「名前、そろそろいいか」

『うん。私ももう…!』



あと少し、と力一杯に押し込まれる陰茎。子宮口に当たって一際強い快感となる。ぐっぐっとまだ奥に入り込もうとするそれは一くんの綺麗な顔からは想像できない凶暴さだ。奥に挿入るのとほぼ同時に肥大化した豆を触られて。達した勢いで叫びそうになった口は一くんに閉じてもらって。一くんは急いで腰を引いて私のお腹へ欲を吐き出した。

荒い息遣いが部屋に響く。心地よい疲労感に包まれてこのまま眠ってしまいそう。だけど一くんに後処理を全部頼むわけにはいかないから、まだ気怠い身体を起こして簡単に拭き取るのだ。



「…後は俺がやっておこう」

『でも』

「名前は朝餉の支度があるだろう。俺は起こしてやれるか分からんが」

『ありがとう。じゃあお言葉に甘えて』



新しく出した布団を敷いて潜る。一人用だから二人で眠るとしたらもちろん狭いのだけれどそれが良い。人の温かさに触れて眠りたい。そうすれば悪い夢に魘されることはない。瞼が完全にくっ付いて眠りに付けそうになった時、一くんが布団の中に入ってきた。そのまま抱きしめられて、とくんとくんと動く一くんの心の臓の音を聞きながら安心して眠りに入った。今日も私は生きている。




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