「あれ、今日はお弁当なんだ?」
待ちに待った昼休み。腹減ったー!と鞄から弁当箱を取り出すと同じクラスの総司に声をかけられる。いつもは購買か学食だもんな、なんて思いながらオレは弁当を作ってくれたあいつを思い浮かべた。
「名前がさー、試合前とかにゲン担ぎとして作ってくれるんだよ」
「名前?だーれ、それ?」
「オレの幼馴染」
名前とは家が隣同士の幼馴染だと説明する。隣の女子学校に通っている一つ下の女の子。そう言えば、総司は思い切り溜息を吐いた。
「そのバランスの取れた美味しそうなお弁当を、ねぇ…」
「なんだよ!やんねーからな!」
「いらないよ。その子が平助の為に作ったんでしょ」
それなりに時間掛けて作られてるんじゃないの?なんて言う総司。確かにいつも名前の弁当は美味しいし、彩もカラフルで、肉ばっかりじゃなくて野菜もしっかり入っている。オレが楽しみにしているのも事実だ。
でも、どうしてそこまでしてくれるのか分かんねぇ。弁当作ってもらったお返しとしてお菓子やアイスを買っているが、それでは釣り合いが取れていない。それでもあいつは弁当を作ってくれる。
「…あれ、平助、気付いてなかったの」
悩んでいたオレに総司の呟きが聞こえてきた。え、いや、でも、あいつとオレは幼馴染だし…なんてか細い反論に総司はまた溜息を吐いて答える。
「本当に【ただの幼馴染】だったらここまでしないんじゃない?幼馴染が購買でパン買ってようが食堂で食べてようが関係ないでしょ」
じゃ、じゃあ、名前はオレのことを…?いやいやいやいや。あんな可愛い奴なんだからもっと良い男がいるだろ!
顔を赤くたり青くしたり、首を横に振るオレを横目に総司は、平助が振るなら僕に会わせてよ。良い子みたいだし、なんて。
「だだだ、ダメにきまってんだろ!名前はオレのだ!!!!」
「…ふぅん。【ただの幼馴染】なのに?」
「で、でもっ!!あいつは大切なんだ!総司にはやんねーよ!!」
「それを決めるのは平助じゃないと思うけど」
今日、告白してやる!!なんて勢い付いたものは良いものの、実際に本人を前にすると言い淀んでしまって。情けないオレの代わりにあいつから声を出してくれて。…情けねぇし、もうオレのものになったんだから総司にはぜってー会わせねぇ!
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