今度の贈り物は何にしようか
ガチャ、と玄関の開く音がした。総司君がバイトから帰ってきた。私は未だに総司君と一緒じゃないと外に出ちゃ駄目って言われている。総司君がバイトに行っている間、私は部屋で一人きり。
テレビを見たり、掃除をしたり、洗濯をしたり、適当にゲームをやってみたり。一人の時間にも随分慣れた。少し寂しいから早く帰ってきてほしいとは思うけど。
『総司君、お帰り。お疲れ様です』
「ただいま。今日はグラタン?チーズの良い匂いがする」
『うん、正解。もう出来るよ。お風呂も沸かしてるけど、どっちからが良い?』
じゃあ、ご飯にしようかな。お腹空いたし。分かった、あとちょっとだから待っててね。
くるりと踵を返してキッチンの方へ向かえば腕をつかまれる。何だろうと総司君の方を振りむけばじっとしててと言われる。大人しくしていれば総司君の息が耳にかかってこそばゆい。ん、と小さく声が漏れた後、彼から解放された。
『…ネックレス?可愛い!』
「若菜ちゃんに似合いそうだなって思って買ってきたんだ。喜んでくれたならよかった」
『ありがとう!大切にする』
「そうしてくれると嬉しいよ」
蝶々のついた可愛らしいシルバーのネックレス。総司君が買ってくれたのだと思うととても嬉しい。大切にしなきゃ。
そうしているとオーブンから音がなる。そっと鉄板を出せばいい焼け具合のグラタンが出来ている。うん、美味しそう。
『はい。総司君。お待たせしました』
「若菜もまだだったの?遅いときは先に食べてて良いのに」
『一人で食べるとあまり美味しくないし…。総司君と一緒に食べたいなーって』
「ありがとう。いただきます」
一緒に食べながら今日のバイトのことを聞く。こんなことがあったとか、こんなお客さんがいたとか。
…私もバイトしたい。今はただの居候の身だし。このままじゃいられない。その為には総司君に許可をもらわないといけない。
『…私もバイトしたいな。駄目?』
「だーめ。まだ万全じゃないでしょ」
『もう大丈夫だよ。一人でいるのも退屈だし…』
「僕が心配なんだ。だからお願い。家にいてくれないかな」
分かった。それ以外言わせない雰囲気を総司君はさらしだしていた。
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