宝物は盗撮コレクション
それから数日経って、私は無事に退院した。と言ってもまだ包帯は取れ切れていないけど。これくらいなら大したことじゃない。
私は一人暮らしだったようで、一人にするのは不安だからと総司君の家に一緒に住むことになった。一人で住むには広い1DKの部屋には私の荷物が運び込まれている。
「はい、家にあるものは好きにしてくれたら良いからね。遠慮しないで」
『ありがとう、総司君』
「可愛い彼女の為だからね。しばらく不便かもしれないけれど」
私のお見舞いに来ている間、結構な頻度で大学やバイトを休んでいたらしい。確かにあれだけ私といればバイトなんてする時間はなかっただろうし理解できる。だからこれからは大学にバイトに行かないといけないんだって。
荷物の整理をしながら違和感について考える。私はこの家を知らない。忘れているだけ?忘れているだけならともかく、付き合っているのに一度も彼氏の家に来たことがないなんてことある?一緒に住もうと言ってくれているのだから、訪問させたくないわけじゃないだろうし。
『…悪い方に考えすぎかな』
総司君はこんなに良くしてくれているのに。感謝こそすれど彼を疑うだなんて。記憶がなくなって、おかしくなっちゃったのかな。
「若菜ちゃんどうかした?」
『ううん、何でもない。荷物運んでくれてありがとう』
自由に使っていいと言われたケースに私の荷物をしまっていく。あらかた片付いたところでお腹が空いてきた。
『……カレー?』
「うん、僕簡単なものしか作れないから。出来たら若菜ちゃんが作ってくれたら嬉しいな」
『いいよ。家にいるし、時間があるのは私の方だし』
ふとテレビ台に視線が動いた。そこにはおにぎりを頬張る私の写真が。その隣には花畑で嬉しそうな私。さらにその隣にはソファで楽しそうに笑う私。飾られている中の写真は私だけが写っている。総司君が撮っているから当然といえばそうなんだけど、何だろう、何か違和感がある。
「若菜ちゃん出来たよ」
その声で私の思考は止まった。
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