はじめ組長が監察方の仕事でいない時なんかは僕が組長代理として組を引っ張ることになる。

三番組ははじめ組長がまとめているだけあって規律を重んじる組だし、やりやすいって言えばやりやすい。一番組なんか血の気が多い者たちの集まりだし。

隊服を身に着けて京の町を巡回する。何度も通り慣れた道。京の人々から恐れられるのにも、もう慣れた。



『あれ、なにやってるの。井吹』

「今井か。いや、酒を買いに来たんだが、ここの店主が譲ってくれなくてよ」

『なぁ。本当に酒はもうねぇのか』

「へ、へぇ。もう空っぽなんです」



…仕方ないから他の店行けば?と井吹に提案しても、どこも断られてばっかりなんだよ、と不貞腐れる。あぁ京の町の人々は僕たちが嫌いだから関わりたくないのか。

そうこうしている内に一人の娘が酒を買いに来た。その娘の顔を見るなり店主はこそこそと奥に下がり、酒を持ってくる。やっぱり、あるんじゃん、お酒。



『…僕たちにも少し譲ってもらえませんか?』

「壬生浪などが飲む酒はねぇ!商売の邪魔だ、出ていけ!」



井吹共々酒屋を追い出されてしまった。井吹は芹沢さんの折檻に怯えている。仕方ないな。



『…井吹、僕も芹沢さんの所に行くよ。役に立てなかったし』

「……いいのか?」

『いくらなんでも理不尽すぎるからな。少しくらい僕がいればましになるだろ』

「ありがとよ」

『巡察のまだ途中だからそれだけ待ってくれ。着いてくるか?』

「いや、そこらへんで適当に時間を潰しておくさ。もしかしたら酒を売ってもらえるかもしれないしな」



この時、芹沢さんという人物をきちんと理解していなかった。宿場町でのことだとか話には聞いていたけれど、直接会う機会が少なく、噂だけが先行しているような状態で人となりを決めてはいなかった。この考えは甘かったのだ。芹沢鴨という人物を僕は甘くみすぎていた。



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