………と言うわけです。洗いざらい吐いた。産まれてから武士として育てられたこと、試衛館の皆に出会ったこと、全部全部。



「君が女だと知っているのは我々と斎藤君だけですか」

『…いえ、芹沢さんも知っておられます。他は分かりません』



自分は女なのだと酷く思い知らされた。どれだけ力を込めても男の人には敵わない。どれだけ男だと言い張っても身体は女の成長をする。悔しいくらいに僕は女だったのだ。



「さて、君の処遇ですが…」



運命の時がやってきた。僕はどうなるのだろう。腹を詰めさせてもらえるのだろうか、首を斬られるのだろうか、あの薬の実験台にされるのだろうか。見逃してもらえるほど壬生浪士組が甘いはずがない。逃してしまってはいけない程度には秘密を知ってしまっている。



「今井君、男としてこらからも生きていけますか」

『………僕を殺さないんですか』

「今は一人でも信用できる仲間が欲しい。お前さんは今まで俺たち誰一人として女だと看破されていない。芹沢さんはまぁ、あれだ」

「女子としての幸せは認めてやれんがね。それでも良いか?」

『はい。ありがとうございます』



十分だ。十分すぎる判決だ。僕はこれから女として生きていけなんて言われた方が困るような人間なのだから。

頭を畳に擦り付ける僕に、誰かにばれたら腹斬りだからな、なんて言ってのける土方さん。本当に女子なのだな…?そう疑う近藤さんに、まんまと我々も騙されてしまいましたね、いつもの口調で言う山南さん。心より感謝します、と絞りだした声は随分弱弱しかった。



「…八重」

『はじめ組長、申し訳ございません。これからも宜しくお願いします』

「………あ、あぁ」



部屋を出てすぐの角にはじめ組長がいた。心配してくれていたらしい。はじめ組長は何も悪くないのに。僕が初めから皆を騙してたからいけないのに。だからそんなばつの悪そうな表情しなくて良いのに。

言うまでもないだろうけれど、他言無用でお願いします、と伝えれば、心得た、と返ってくる。はじめ組長が漏らすとは考えられないけれど、念のためだ。



「八重、悪かった。その、昨夜、見てしま…って………」



尻すぼみになっていく、はじめ組長の言葉。頬は赤く染まって襟巻で口元を隠してる。あぁ、あれか。別に気にしていない。僕は他の男の人より胸がある、なんて認識だし。晒を巻けば少し苦しくなる厄介者なんて扱いだ。



『いえ、僕があんなところにいたのが悪いですし。監察方の仕事だったんですよね?』

「そうだ。少し遅くなってしまった、と思っていたら暗がりで何やら怪しい動きをしていた。泥棒かと初めは思ったんだが」



お互い黙って、沈黙が支配する。



『…あの、はじめ組長』

「なんだ」

『部下が女だって知って扱い辛いと思ってませんか。今まで通りに出来たらお願いしたいのですが』



厚かましい話だと思ってる。だけど今更女扱いされてもこっちも困る。男として生きていかなきゃいけない以上、今までどおりが一番なのだ。



「俺は左之みたいに女の扱いは上手くない。そう扱えと言われても上手くできないだろうが、今まで通り接することならば問題ないはずだ」

『ありがとうございます』



僕、今日は感謝しっぱなしだな。皆に助けられて、ここで生きていけるんだ。それを忘れちゃいけない。



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