1日目


ふらふらと睡眠不足を訴える身体をどうにか動かして家に向かう。始めからあんな納期無茶だって…!!なんて上司に恨みを持っても、直接言えるわけなんてなくて。おかげで毎日終電まで残業だ。朝だって始業前から出社している私の目の下には大きなクマが出ていた。肌も荒れて、髪だってトリートメントする時間なんてない。悲しき社畜の運命よ…、なんて適当に入ったコンビニでおにぎりを購入する。

ありがとうございましたーと機械的な声を聞いてコンビニを出て、アパートまで帰ったところだった。アパートのゴミ捨て場に、誰か、いる。酔っ払いだろうか。夜遅く、人通りもほとんどない場所だから近づかないと分からない。ど、どうしよう…。生きているかくらいは確認すべき?ゴミを布団替わりに寝ているだけなら良いけれど…いや、それもこの時期だと凍死しちゃうかもしれないし。住んでいるアパートのゴミ捨て場で死体発見とか勘弁してほしいところなんだけど。

…少し悩んだ挙句、私は彼に声をかけることにした。警察沙汰とか嫌だしね。すいません、と声をかけても気づかない。少し大きな声でも大した反応が返ってこない。どれくらいお酒飲んだの…。泥酔している男の人を持ち上げるような力なんてない私は彼を思い切り揺さぶった。ちょっと、起きてください!そうすれば眠たげな彼と視線がぶつかった。



『……大丈夫ですか。こんな所で寝ていたら風邪ひきますよ。今からタクシー呼ぶので、家に帰ってはどうですか』

「………やだ」

『…は?』

「………家、帰りたくない」



ちょっと待て。何を言っているんだ、この男は。家に帰りたくないなんて、どこの家出少年だ。少年って言うか私とほぼ同い年だろう。もうそう言う歳は過ぎたはずだけど。



『…このまま眠っていたら凍死しますよ』

「じゃー、キミの家に連れてってよ」



そんな言葉を吐いた彼の瞳が酷く寂しがっていて、つい、いいよ。なんて言ってしまった。





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