2月14日、バレンタインチー。世の中がチョコと愛で溢れかえる日。私は締め切りに追われて忙しそうな光さんの家に来ていた。
当日は休日だから会えないか、と打診したのは私だ。せっかく恋人がいるんだもん。一人寂しくバレンタインを過ごすなんてことしたくなかった。
せっせと散らかった雑誌を片付けたり、片手間に食べられるようにおにぎりを作ったり。この調子じゃいつ仕事部屋から出てくるかわからない。せっかくのバレンタインなのに。
ああ、ダメダメ。忙しいのをわかって乗り込んだのは私だ。光さんから許可が出たといっても仕事の邪魔をしちゃいけない。我慢我慢。
私の分のお昼も適当に済ませて今から作るのは光さんに渡すチョコレート。前日の間に作っておこうと思っていたけれど、光さんが家の台所で作って良いというので言葉に甘える形となった。
『…で、この後どうするんだっけ』
ネットとにらめっこをして数十分。なれない作業に苦戦しながらも着々とチョコづくりは進んでいた。これを中に入れてかき混ぜて…あとはレンジで完成を待つだけとなった時に光さんが部屋から出てきた。
髭があって、髪も適当に一つに纏められているだけで、部屋着のままの光さんの姿。これはレアだ。いつもピッと決まった格好してるから。じーっと見ていると視線に気付いたらしい光さんが声をかける。
「…わるい」
『なにが?』
「バレンタインだろ。全然かまってやれてない」
『私が押しかけたんだもん。お仕事大丈夫?』
「まぁとりあえずは」
珍しく男口調。女装していることが多いからか女言葉を出すことが多いのに。そこまで頭が回っていないのか素の話し方になっている。
ちょっとまってな、と言って彼は洗面所に消えてった。きっと顔を洗って髭を剃るのだろう。一日家にいるのなら別にどんな姿でも良いのに、なんて思っていたらちょっと出かけてくる、なんて。え、どこ行くの。
「アンタに甘えっちゃったからね。たっぷりお礼しなきゃ」
そう言った光さんは、いつもの光さんに戻っていた。そうして数十分後に帰ってきた彼は大きなバラの花束を持っていて。
「女が男にチョコをあげるのは日本だけだからね。外国じゃ男が女に花を送るのが普通だし」
そこからは先程までと打って変わり、甘々に光さんは私を甘やかしてくれた。
「あれ?チョコ、名前から食べさせてくれないの?」
『…はい、口開けてください』
「そうじゃないだろ、ほら」
ぽい、と口に入れられたチョコ。光さん用に少し苦くした味が広がっていく中、彼は私の口内にいともたやすく舌を侵入させた。絡まり合う舌の上に乗ったチョコは二人の体温で溶けていって。
「ほら、まだ1個。全部こうやって食べさせてくれるんでしょ」
そんなことを言う光さんは捕食者の瞳をしていた。
当日は休日だから会えないか、と打診したのは私だ。せっかく恋人がいるんだもん。一人寂しくバレンタインを過ごすなんてことしたくなかった。
せっせと散らかった雑誌を片付けたり、片手間に食べられるようにおにぎりを作ったり。この調子じゃいつ仕事部屋から出てくるかわからない。せっかくのバレンタインなのに。
ああ、ダメダメ。忙しいのをわかって乗り込んだのは私だ。光さんから許可が出たといっても仕事の邪魔をしちゃいけない。我慢我慢。
私の分のお昼も適当に済ませて今から作るのは光さんに渡すチョコレート。前日の間に作っておこうと思っていたけれど、光さんが家の台所で作って良いというので言葉に甘える形となった。
『…で、この後どうするんだっけ』
ネットとにらめっこをして数十分。なれない作業に苦戦しながらも着々とチョコづくりは進んでいた。これを中に入れてかき混ぜて…あとはレンジで完成を待つだけとなった時に光さんが部屋から出てきた。
髭があって、髪も適当に一つに纏められているだけで、部屋着のままの光さんの姿。これはレアだ。いつもピッと決まった格好してるから。じーっと見ていると視線に気付いたらしい光さんが声をかける。
「…わるい」
『なにが?』
「バレンタインだろ。全然かまってやれてない」
『私が押しかけたんだもん。お仕事大丈夫?』
「まぁとりあえずは」
珍しく男口調。女装していることが多いからか女言葉を出すことが多いのに。そこまで頭が回っていないのか素の話し方になっている。
ちょっとまってな、と言って彼は洗面所に消えてった。きっと顔を洗って髭を剃るのだろう。一日家にいるのなら別にどんな姿でも良いのに、なんて思っていたらちょっと出かけてくる、なんて。え、どこ行くの。
「アンタに甘えっちゃったからね。たっぷりお礼しなきゃ」
そう言った光さんは、いつもの光さんに戻っていた。そうして数十分後に帰ってきた彼は大きなバラの花束を持っていて。
「女が男にチョコをあげるのは日本だけだからね。外国じゃ男が女に花を送るのが普通だし」
そこからは先程までと打って変わり、甘々に光さんは私を甘やかしてくれた。
「あれ?チョコ、名前から食べさせてくれないの?」
『…はい、口開けてください』
「そうじゃないだろ、ほら」
ぽい、と口に入れられたチョコ。光さん用に少し苦くした味が広がっていく中、彼は私の口内にいともたやすく舌を侵入させた。絡まり合う舌の上に乗ったチョコは二人の体温で溶けていって。
「ほら、まだ1個。全部こうやって食べさせてくれるんでしょ」
そんなことを言う光さんは捕食者の瞳をしていた。
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