☆恋人になりました



これの続き




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『棗君!それずるい!』

「ちゃんと見てない名前が悪いんだろっと」



棗君と付き合い始めて何度目かのお宅訪問。あれから風祭君にはもちろん、朝日奈椿と朝日奈梓にも報告した。皆から、おめでとうという言葉をもらえて私は幸せだった。

それから…棗君の義理の妹の絵麻ちゃん。たまたま会う機会があって、話すことになったんだけど、ものすごく良い子だった。棗君があれだけ褒めてたのも頷けるくらいには良い子だった。かといって私の前で二人きりの会話をするのはやめてほしいけど。



『棗君ちょっと、っ…!』

「ほら、ゲームに集中しないとまた負けるぞ」



後ろから私を抱きしめるように座っている棗君は時々ちょっかいをかけてくる。首筋にキスを落としたり、耳を舐めてみたり。その度に私は身体をビクつかせ、画面から視線を逸らしてしまう。



『やっぱりわざとだったの…!?負けたら罰ゲームだって言ったの棗君なのに!』

「そりゃ、名前が思ったよりやるから…っと。ほら、そこ危ないぞ」



ばっと画面の方を見ても既に手遅れ。私は棗君に負けてしまった。不正を訴えたところでどうせ棗君に丸め込まれるだろうから、諦めて罰ゲームを受けたほうが良い気がする。

はいはい、それで何すれば良いの?と聞けば、名前からキスしてくれ、なんて。そういえば私からってしたことないかもしれない。以前強請られたけど、恥ずかしいから嫌だって断った記憶がある。それをまだ根に持っていたのか、ただ単にキスがしたいだけかは分からないけれど、勝負は勝負。負けたのは私なのだから素直にするべきなのだ。

じゃあ棗君、目、瞑って…。私は棗君の方に振り返り、瞳を閉じた彼の顔を見つめる。無防備はその顔は少し幼さを残しつつも綺麗に整っていて、神様は不公平だな、なんて関係のないことを考えてみる。そんなことをしても私の顔が美人になるわけじゃないし、私からのキスがなくなるわけじゃないけど。どうにか誤魔化さないと羞恥に耐えられそうになかった。

ちゅっとリップ音を鳴らして触れ合う唇。すっと離れようとしたのに後頭部を固定されて逃げられなくなってしまった。



『んん……っ、ま、………んむっ……!』



息が上手くできない、と酸素を求めた唇から棗君の舌が侵入してくる。それは簡単に私のものを絡めとって、気分は否応なしに上昇していった。

するっと裾から棗君の手が侵入してきて、このままヤるのかな、なんて思っていた時、ピンポーンと無機質な音が耳に入った。ピンポンピンポンピンポンと連打される様は近所迷惑以外何者でもない。棗君は観念したように私の服の中に侵入させていた手を止めて、すまん、と謝ったのだった。



「俺が対応するからお前はほら、少し顔を冷やしておけ」

『へ、あ、う、うん…』



………私、そんなに物欲しそうな表情でもしていたのだろうか。とりあえずこんな顔を他人様に見せるわけにはいかないのでペチペチ手で顔を冷やしてみる。うん、大丈夫。ほっと一息をつく前に身体に大きな衝撃が。まぁ、言わずもがな、朝日奈椿なんだけど。



「名前ー!久しぶりー!」



朝日奈椿と朝日奈梓の登場により、私と棗君のイチャイチャタイムはなくなった。さすがに人前でスる趣味なんてない。棗君は若干不貞腐れ顔だけど、自分の兄弟だよね!?なんて思ってしまう。

朝日奈椿は私にべったりだし、朝日奈梓に至ってはお邪魔だったかな?なんてわかりきったことを聞く。実際に会うのは久しぶりなのにそんな気がしないのは、よくLINEしたり棗君からよく話を聞くからだろう。

こうやって賑やかなのも悪くない、そう思う程度には仲良くなっているらしい。かちゃかちゃとお皿を準備している台所に入ってきた棗君が不意打ちにキスをする。



「……あいつらがいなくなったら、」



その先の言葉は朝日奈椿によって遮られてしまったけれど、私の身体は勝手に期待して熱くなっていた。



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