☆酔っぱらい



「…あ。ひかにー、今日、名前、飲み会だって言ってたよね」

「あぁ。旧友達と会うんだって」

「白のニット着てた?」

「着てた。ってかさっきから椿、何」

「…あのさ、これ」



椿から手渡された携帯の中には名前と誰か知らない男が二人仲睦まじく映る写真。そこだけ切り取ればカップルかのような。名前のアカウントじゃないとは言え、堂々とSNSに浮気の証拠を上げるなんてね。

教えてもらったアカウントを調べればコイツにプライバシーってもんが存在しないんじゃないかってくらい赤裸々に自らの個人情報を曝していた。おかげで簡単に店を特定できたわけだけど。



「………迎えに行って来る。椿、適当に誤魔化しといて」

「えー……、対価は?」

「ファンだって言ってたラノベ作家のサインでどう?」

「おっけー。乗った」



これでこのまま名前を連れ帰らなくても椿がどうにかするだろう。椿ってところが不安材料って言えば不安だけれど対価を要求してきている以上、最低限の働きはするはずだ。一応お迎えに行けるようにって家で酒を飲まなくて良かった、と思いながら車のエンジンをかけた。

騒がしい店内。あちこちで盛り上がる酔っぱらいたち。名前のグループは、と探しながら歩く。…あ、いた。名前の隣にいる男は手を握るだけじゃ飽き足らず腰を抱き寄せていた。



「名前、帰るよ」

『ひ、ひかるさん!?』



男の手をぺりっと剥がし自身の方へ抱き寄せる。急に立たせたからか、ふらついた彼女を支えれば随分酒臭かった。アンタ、あまり酒は強くないって言ってたのに。

そのまま財布から適当にお札を出してテーブルに置く。ごめんね、俺の彼女随分酔ったみたいだから連れて帰るけど後はご自由に。なんて適当に挨拶して名前を車まで運ぶ。助手席に座らせて直ぐ側にあった自動販売機で買った水を飲ませる。介抱と言うより介護しているかのようだ。



『えへへ〜、ひかるさんだぁ。あいたかったぁ』



当の本人はというとこんな調子で。いつもより素直な名前に少しだけドキッとする。だからと言って他の男にベタベタ触らせていたのは許せないけど。近場にあったラブホテルに車を止めて名前の身体を支えながら部屋に入る。いつもはシャワーやお風呂に入ってからしか駄目って言うけれど今日は聞いてやらない。こんな力の抜けた状態で他の男に襲われたらどうするって言うの。ただでさえ男と女には力の差が存在するっていうのに。

ベッドに寝転んだ名前に覆いかぶさるように上に乗る。酔っぱらいでもこれから何が起こるのかやっと理解したみたいで。や、なんて小さな抵抗をするけれどこれはお仕置きなんだから。他の男に触らせて嫉妬させたお仕置き。満足するまでやめるつもりはない。酒臭い口内を味わいながら名前の服の中に手を入れた。



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