『ひゃっ、ん…っぁ』
「っ、相変わらず…すごいっ締め付け、だね」
グチュグチュと卑猥な音を立てる其処はもう溶けちゃうんじゃないかってくらいに熱を持っている。
この人はずるい。私がこの人のことを好きだということを知っていて、自分は別の想い人がいるくせに私をその子に重ね合わせて優しく抱くんだ。
俺らにかーいー妹ができたんだとつっくんに言われたのはいつの頃だったか。あっくんの表情も柔らかくって本当に可愛らしい子なんだろうなと思った。けれどいつからか彼らはその子に夢中になり始めた。どうして?私はずっとあっくんのことが好きだったのに。
取らないで。お願いだから取らないで。私から二人を、あっくんを取らないで。
つっくんとあっくん。二人は私の大事な同期。一緒にデビューしたからか、同じ現場になることも多くて、三人でいることがいつの間にか当たり前になっていた。
「ねぇ名前。ちょっと相談したいことがあるんだけどいい?」
『どうしたのあっくん。珍しいね。いいよ。近くのカフェにでも行こうか』
もうこの頃にはあっくんに惚れていた。スマートに見えるけれど、眉を八の字にして困っている顔とかはにかんだような笑顔とか時々見せる表情に魅せられて。だからあっくんに何を言われても返事は決まっていた。このときだけは断っておけば良かったと後悔したのはすぐのことだった。
「僕、最近おかしいんだ。椿と彼女が結ばれて嬉しいはずなのに胸が痛くてたまらない…」
頼んだコーヒーが届いてすぐにあっくんは爆弾を投下した。
これは女の勘だけど分かった。あっくんはその彼女に惚れているのだと。自覚するのも時間の問題だろう。でも自覚した後は―?きっとあっくんの事だからつっくんと彼女の仲を壊したりはしないのだろう。ただ彼女を見つめて自分の兄と好きな人の幸せを祈るのだろうか。多分、いや、きっとそうだろう。私の好きになった朝日奈梓という人間はそういう人だから。
『ねぇあっくん。好きだよ』
「………ぅん、え?」
『多分あっくんはその彼女のことが好きなんだと思う。けど私は諦められない。私じゃ駄目かな…?代わりでもいいから。お願いっ…!』
あっくんは珍しく目を見開いた後、私を抱き寄せた。
「名前…」
あぁ、弱弱しいあっくん。恋心を自覚した途端失恋決定なんて可愛そうなあっくん。とても愛おしいあっくん。
『名前じゃないでしょ?あなたの可愛らしい妹、だよ』
そうして私とあっくんの不純な関係が始まった。