っ鉄っ!…鉄…
お願いだ死なないでくれっ


休?泣いてるのか?……



僕を独りにしないでっ…。


あぁ…当たり前だよ。
誰が休を独りにするかって……





言っただろ?
俺と兄貴でずっと守ってやるって

家族も
涼州も……





■護りたい人■





全てを失った…
涼州 家族 未来

なにもかも…僕たちは
曹操に奪われた救われた


だけどだから


俺にはここに



がいる。









・・・・・・・・・・・・




「……子龍ぅ…。朝か?」
小さな窓から差し込む光。
扉が開く音で目を覚ました馬鉄はこの部屋の主に尋ねる。
「おはようございます。叔戒。…朝というより昼ですね。」

そう言われ彼はベッドから勢いよく起き上がる…が、直ぐに項垂れた。

「あまり勉強熱心過ぎるのも問題あると思いますが?鍛練の時馬超殿が探してましたよ」
勉強と言われれば聞こえがいいが、内容はそんなにまともな物ではない。
所詮夜の勉強である。

「……じゃあ、部屋に戻らないと。兄貴になんて言い訳するかな……」
「迷子になってた…でいいのでは」
「ばっかじゃねーの?一体何時間迷子になるんだよ」
そういうと趙雲はにっこり笑って

「馬超殿なら信じますよ」

と言った。




蜀にきて一つ目の季節が終わろうとしていた。

「叔戒、最近艶っぽくなってきましたよ?」

俺と子龍は妙な関係だ。

「っるさい。……艶が出てどうすんだよ。」

色んな意味で俺は子龍を師としている。
朝は鍛練
夜は情事の

「そろそろ本命に実行してみてはどうでしょうか?」
「あーダメ。……まだ中途半端だっての…」

別に子龍は俺の事を好きなわけではない。
そして俺が好きなのも子龍ではない。


「……まぁ貴方がそう言うのであれば仕方ないのですが」


趙雲は不安であった。

何度も体を重ねて思ったのだが、馬鉄は明らかに“受け身”として成長いるのだ。
日に日に彼の性感帯が増えている。
自分のやり方が悪いのだろうか?とも思ったが、どうやら違う。

「………じゃあ、とりあえず部屋に戻るな。」
そう言って馬鉄は重い腰をあげ、部屋から出て行った。




「………血筋であれば、これほど喜ばしいことはないですね」

馬超殿はどの様に鳴くのだろうか…
馬鉄を抱く度に込み上げる感情。


錦は美しい…
しかし…その中に踏み入るのは安易ではない。

美しいながらも、一度睨まれれば精神が砕けてしまいそうな程の獰猛な獅子をその中に飼っている。

馬超は守りが堅くてなかなか攻める事が出来ない。だが恐らく一度崩れてしまえば、脆いのだろう。


しかし…


「弟君は危険だ……」
馬超と似た風貌。
しかしその中に獅子はいない。口は余り良くないが、中にいるのはただの猫だ。

牙をむいたとしても、それは奥深くまでは刺さらない。



純粋過ぎるのだ。











馬鉄が部屋に戻ると、部屋で自分をずっと心配していたと思われる人物がいた。

「休……」
「鉄っ!一体どこに行ってたんだ」

それは馬鉄の兄であり、思いを寄せている馬休である。
座ってた椅子から立ち上がり、馬鉄を睨んだ。

「心配したじゃないか……。兄様もずっとお前のこと探してたんだぞ」
「…ごめん…。」
馬休の目には涙がうっすら滲んでいた。それをみて馬鉄は小さな声で謝る。

「………どこに行ってた。」
馬休がいつもの顔ではなく“兄”としての顔となった。
こうなった馬休は誰にも止められない。
真実を聞くまで退かないだろう。

嘘を言ってもすぐにバレてしまう。
といって、本当のことを言うわけにはいかない。
それなら……



馬鉄は首を横に振った。

「休頼むっ今は言えないんだっ。」
頭を下げ、ごめんっ…と手を合わせた。
それをみて馬休はため息をつく。




「……もう心配かけさせるんじゃないよ?鉄の身になにかあったら…僕どうしていいかわからなくなるから……」
そう言って馬休は馬鉄の頭を軽く叩いた。
馬休にしては退くのが早すぎる…と馬鉄は思ったが、それ以上に、兄の言葉をきいて馬鉄は内心感動してしまった。

自分の中が馬休で一杯なのと同様に休ももしかしたら俺で一杯なのかもしれない…

そう錯覚してもおかしくない台詞だった…。





・・・・・・・・・・



熱くなる身体。飛び散る汗。
轟く雄叫び。



その中心にいるのは長坂の英雄。龍の化身と称されし男。
そしてもう一人は若いながらもその武で名を漢に轟かせた錦と称された男。

ぶつかり合う槍は今にも互いを食いちぎりそうだ。


「………」
暫く息をすることさえも忘れた。


馬鉄はあの日から今まで、己の武を磨きあげてきた。
今なら兄貴を超えられていると思った。



しかし…



「従兄上だってそうさ……」
「岱…」
後ろから馬岱が現れた。
その手には剣が握られている。
「……そして俺もね。」
一戦交えようか、と馬岱は馬鉄の手を引く。



馬岱は、そこまで強い…というわけではなかった。

しかし久しぶりに再会すると、そんな彼はここにはいなかった。

鋭い眼孔。
その目は同じ血が流れていることを改めて思わせる。

相変わらず体のラインは細いが、以前よりかなり筋肉がついた。

「鉄はどうして強くなりたいと思った?」
「それは……」


馬岱が馬鉄に手合わせを願った。
彼が構えると馬鉄も握っている槍を構える。


「俺は正直、鉄みたいに誰よりも強くなりたいって思ったことはなかった……。昔はね」
「昔は?」
ということは今は違うんだろうな。
それなら今の馬岱は納得出来る。確かに比にならないくらい攻撃が重くなった。

「……人って誰かを思えば思うほど強くなる…。そう思わないか?」
「………」
「初めてだった。……従兄上のあんな表情をみたのは…」
「…兄貴の?」




喪失
苦痛
裏切り
屈辱
絶望




「……なにがあってもその火を消してはいけないと思った。」
「…………」

「油断したらダメだよっ」

話の途中で馬岱の剣が馬鉄の懐ギリギリまで入り込む。
持っていた槍は、カランっと軽い音を立て地に落ちた。

おそらくこの音を聞いたのは二人だけだろう。
ほかの者達はみな、趙雲らに釘付けだ。

「……なぁ鉄。君言ったよね。涼州を守る…家族を守る為に力が欲しい…って」
「…………」


「今も本当にそう思ってるかい?」
涼しげに言ったが、その言葉には熱い思いが込められていることにその時の俺は気づかなかった。



ただ立ち尽くす馬鉄の目の前にに馬岱は剣の切っ先を向ける。
初めて馬鉄は馬岱の目を恐ろしく感じた。
「………岱?」
「似てるな…って思って。君の目。まるで鏡を覗いてるようだ。」

自分は“あの人”を護りたい
だけどどうしていいかわからない。



「悩みがあるんだったらいつでも聞いてあげるから。」
馬岱は突然表情を極端に変え、笑顔になった。



「………」
「だから一人で悩んでる暇があったら、休の傍にいてあげなよ。」

馬岱は剣を下ろし、馬鉄が落とした槍を拾う。

そして未だ打ち合っている二人を見た。

「いつかはあの場所に俺が立つ。趙将軍に従兄上は絶対渡さないよ。」
「………」

……だから俺はもっと強くならなければならないんだ


昔の馬岱はどちらかと言うとめんどくさがり屋で、何事にも真面目に取り組むことはなかった。それでも、元から器量がいいお陰だろう…苦労した姿は見たことがなかった。


年は1つ違うが、実質的には季節1つ分しか産まれた日が違わない。


それなのに


そう言った岱がとても大きな存在に思えた。


「って、ちょっと待て。岱、お前……まさか」

あまりにも格好良くみえたせいだろうか、馬岱の言葉の意味を理解するのが遅れた。

「鉄には悪いけれど、正直あの時部屋に居たのが従兄上じゃなくて本当によかったよ」
今日初めて馬岱が、先ほどみたいではなくいつもどおり笑う。
馬鉄は馬岱の言葉で、蜀にきて最初の日の夜のことを思い出し顔を真っ赤にした。


「…………」
話が全て繋がった馬鉄は力が抜けてしまう。

「似たような目って…そういうことかよ。」

岱は兄貴のことが好きなんだ…と、なんとか頭で理解したが、意外過ぎて仕方ない。

「……ん、でも俺と鉄は敵になるのかな?」
「なんでだよ……」
「鉄が休と両思いになったら、一族で誰が子孫を残すんだ?」
「………」

ちょっと待て


「だったら、俺たちが生きてるってわからなかったら岱は兄貴を諦めてたのか?」
そう言うことだ。生きてなかったら馬一族は兄貴と岱しかいない。
「その時はその時。」
不適に笑い馬岱は槍を馬鉄に投げた。
そして、後ろを向いて

「まぁ鉄が休に本気なら、俺は従兄上から手を退くよ」

と言いその場を去った。

馬鉄は馬岱の真意が解らず、その場で固まる。
今までの言葉の全てをひっくり返してしまうような言動だ。




「どうした鉄?」
「…………兄貴っ!?」

どれくらいの時間ここに立ち尽くしていたのだろう?
そしていつの間に子龍と兄貴の打ち合いは終わったのだろうか…

後ろから肩を叩かれた馬鉄は驚き腰を抜かす。それをみた馬超は顔をしかめ、趙雲は苦笑いをしていた。


・・・・・・・


流石に今日の夜はおとなしく自室で過ごすことにしようと思ったのだが、どうも寝つきが悪く夜風にあたることにした。


「…鉄?」
「ちょっと外の空気吸ってくる。すぐに戻ってくる」
心配そうに自分をみる兄に馬鉄は「すぐ戻ってくるから」と言って振り切った。


廊下に出ると何人か人が歩いていた。
主に女の人の方が多い。



「そういえばさっき趙将軍と馬将軍が広間の方で飲んでいらしたわよ」
「えー本当?仕事が終わったらみに行こうかしら」

しばらく歩いていると、そんな会話が聞こえた。



「………休誘って行ってみるかな」
馬休は見た目にあわず兄弟の中で一番の酒好きだ。

そう思い、来た道を引き返した。


喜ぶだろうな…
と心弾ませ部屋に戻る馬鉄は、数分後に目の前が真っ白になることなど夢にも思わなかった。




「っやめ……」
「ほら、抵抗なんかすると大事な弟がどうなるかわからないぞ…」

部屋の前に立った瞬間聞こえた声。

馬鉄の動きは止まってしまった。

「やめろっ!……鉄を傷つけたら絶対許さないからなっ」
「…ならちゃんと俺に従うんだな……。このまえみたいに邪魔が入らないように、来そうな奴らはみんな押さえてるからな。馬超は広間、馬岱は執務室…あと」


―――弟は弟で今頃楽しんでるだろうね。



そんな言葉が聞こえた瞬間、馬鉄は背後に人の気配を感じた。しかし気づいた時はすでに遅かった。

「―――――っ!!?」

口を手で塞がれ、手際よく何かで両手首を縛られた。


さっきまで誰か歩いてたから、すぐに助けを呼んでくれると思ったが、誰も視界に入らなかった。




・・・・・・・・・



連れ込まれたのは薄暗い部屋。
武器がずらりと並ぶその部屋は、夜になると誰も訪れない。

「っぁ……」
投げ込まれ地面に体が叩きつけられ呻き声をあげる。


男は3人。
みんな自分より体が大きい。

「っなにすんだよ!!」
「今度戦場に行くんだろ?その時に性欲処理に使えるかどうか確認してやるよ」
そう言って二人の男が馬鉄の手と足を押さえる。

もう一人は目の前で膝をつき、馬鉄の服の腰紐を解いた。



「………さすが馬超の弟だな。体鍛えすぎじゃないか?」
男は服の合わせを開き、胸筋に触れる。

たった…
たったそれだけのことなのに


「んっ……」


体がビクッと反応してしまった。無論男たちがそれに気づかないはずはない。

「………お前もしかしてマジでそっちなのか?」
「…………」
何も言い返せなかった。少し触られただけ感じてしまったことは事実だから。


「……慣らさなくても入ったりしてな」
薄笑いしながら男の手は下へと下がる。


衣は全て落ち、全てさらけ出された素肌。
うつぶせにされ、二人の男によって左右に広げられた足。
これからされることは安易に考えられる。

「っ……」


「指1本なんて簡単に入るじゃないか……さては…昨日も誰かとやってたのか。それも1回ってわけじゃなさそうだ」


男は馬鉄の中に中指を埋め、すんなり入ったことを確認すると、次はいきなり3本に増やした。

――俺たちの前でも乱れてみせろよ

そう囁く男の声に馬鉄は怒りを感じた。
これ以上の屈辱はない…

「っ……てめぇらいい加減にしっ…ぁうっ…」

力の限り抵抗しようとしたが、声をあげた瞬間、運悪く男の指が馬鉄が一番反応してしまうところに当たり体全身がビクンっと震えた。

「すげぇな…後ろでここまで反応出来るのか。」
「前よりこっちの方が余程いいんじゃないか?」

男たちは馬鉄の反応を見て笑い、前の方は触れないことにした。


「まぁ…また叫ばれてもこまるから、一応栓をしておくか。」
足を掴んでいた男のひとりは立ち上がり地面に伏している馬鉄の髪を掴み顔を上げさせる。


目の前に映ったのはその男の猛る性器。しかし目に映ったのはほんの一瞬。
何があるかわかったとき、すでにそれは馬鉄の口内へと押し込まれていた。


「んぅぐぅぅっ……ぅ」
息もできないほど奥に挿され馬鉄の目にうっすらと涙が浮かんだ。

「おい、それだとコイツの声がきこえないだろ。これから泣かせてやるのに。」
「馬休の方がいい気もしたが、コイツの方がイイ声で泣くだろうな。」
「なんてったって、毎晩誰かわからないが可愛がられてるんだからな。」

そんな男たちの会話で思い出した。馬休もこういう目にあっていることを…

早くこの場をなんとかして兄を助けにいかなければ…

だけど……


「っ………」
「ぅっ!……この野郎っ歯立てるなっ」
後ろで指が中から抜けたかと思えば、次の瞬間更に質量が増したモノが一気に奥へと突き刺さる。その痛みに思わず声が出そうになったが、口に入っているモノがそれを阻んだ。しかしそれが原因で男は苦痛を味わう。

馬鉄のせいではないが、目の前の男は馬鉄の髪を更に強く掴み仰け反らせ腰を強く打ち付けた。



オレハ…ナニモマモレナイ?

涼州も…一族も




休でさえ………






自分の唾液か男の精液かわからないモノが口の両端から零れ

床は自分の先走りの液体で濡れ
本来の使い方を間違えている穴からはだらしなく汁が滴っていた。




ホント、滑稽過ぎて笑ってしまいそうだ。



「……どういうことか説明してください」


もう自暴自棄してしまおうかと思った時、今ここにいる男たちではない声が馬鉄の耳へと届く。
その声がした途端、男達の動きが全てとまる。

「これは立派な犯罪ですよ。殿が知ったら悲しむでしょうね」
男の足音が一歩一歩近づいてくる。


「こっ……これは、こいつが誘ってきたんだ。」
男は馬鉄に入れてたモノを抜き、慌ててしまい現れた男に言う。
前と後ろ一気に中から抜かれた馬鉄から甘い声が漏れた。

「ほら…こいつが男慣れしてるのが証拠だ。」
馬鉄は咽せながら現れた男の姿を双眸でとらえる。
男は馬鉄を見てうっすらと笑った。


「……私は殿が悲しむのは嫌なんです。だから、ここでみたことは口外したくはありません。」
「…ははっ、さすが趙将軍。話がわか……」


男の声はそこで途絶えた。
趙雲が近くにあった槍で喉を一突きしたからだ。

男は声を出すことが出来ず地面に崩れる。まだ意識はあるようで趙雲に「なぜ?」と口を動かしていた。

「彼の名誉の為に言いますが、叔戒は誰と問わず腰を動かしていたわけじゃないですよ?」



――私一人だけですよね?



趙雲に問われ馬鉄は頷く。



「まぁ知ったところで、意味はないけどね」

慌てふためき、逃げようとした残りの二人は趙雲の槍に捕らわれてしまった。
断末魔が倉庫に響き渡り、赤い雨が馬鉄の上に降り注いだ。



・・・・・・・・




「…すぐ見つけられなくてすみませんでしたっ」
「……っ!休っ…休を助けにいかないと!!」
馬鉄は立ち上がり馬休の所に行こうとした。しかし、趙雲が馬鉄を立たせようとせず、落ち着かせる。


「馬休なら、大丈夫だよ。今、叔戒のことをみんなと探してる」
それよりも…と、趙雲は馬鉄を床に組み敷いた。

「……あんな奴らですら振り払えないとは、本当に馬超殿の弟か?」
「…………」

暗くてよく見えないが、その時の趙雲の目は今までみたどんな目より怖かった。

「―――――!」
「………?」
突然趙雲は立ち上がり、廊下へと歩く。


「趙雲殿、そっちに鉄はいたか!?」
「ええ、いましたよ。」

馬超の声が聞こえ、馬鉄は体を竦ませた。

「………男たちは何処だっ。八つ裂きにしてくれるっ」
「ちょっと待って下さい馬超殿。それはもう私がしましたから。……叔戒、少しパニック状態になってるんです」
「………」
「落ち着いたら私が部屋へ連れて行きますので、それまで待っててくれませんか?」


馬超はわかった…と言って、その場を後にした。




・・・・・・・・・



趙雲は全て洗い流す為に馬鉄をお風呂へと連れて行った。
まず馬鉄は口を何度も洗う。

その後は趙雲が中に出された液を丁寧に洗い流してあげた。
その間3回達した馬鉄をみて思わず苦笑いをしてしまう。

今は趙雲のベッドに横になり、ずっと無言でいる。


「……」

趙雲も流石になんと声をかけていいかわからず困惑していた。

そのとき




「鉄っ!!」

名を呼ぶ声と共に、趙雲の部屋の扉が勢いよく開く。

馬鉄も驚き体を起こすと、再び体が倒れた。
目を見開き状況を確認する。

「っごめんな……」
自分の上に乗り、涙を流す馬休。一度ではない。何度も何度も謝罪の言葉を繰り返した。

「鉄のこと全然守れなかった……。怖かっただろ?………」

馬休は卑怯だと馬鉄は思う。

「………休…泣くなって。俺大丈夫だからさ。子龍が助けてくれたし。」
一応未遂ってことにしておこう。やっぱり休が泣くのをみるのは嫌だ。
可愛い過ぎてどうにかなってしまいそうだ。
それも自分のことを心配してくれて泣いてると思えば余計に胸が締め付けられる。

「………休は俺が守る。お前弱いんだから無理すんな」
「うるさい。……僕が兄だ。……弟を守るのが兄の役目だろ」
そんな二人のやりとりをみて、趙雲はそっと部屋から出て行く。

この分だと夜の勉強は終わりかな?……と思いながら……















・・・・・・・





「………仲がいいんですね。あの二人」
「……まぁな。」
行き場のなくなった趙雲は事後報告をしに馬超の部屋へ足を伸ばした。
状況が状況だから馬岱は趙雲がこの部屋にいることを我慢している。

「…それにしてもやられましたね。まさかこんな狙われ方をするとは」
「…………」
馬超と趙雲はいい酒があると言われ部下から酌をしてもらっていた。
馬岱は今日中にやらないと丞相に怒られると、嘆いてきた文官の手伝い。

馬超と趙雲が広間にいるということが女たちに広まれば、この時間だ。
廊下から人は殆どいなくなる。

「………それにしても鉄なら、あの程度の男達くらい逃げれることが可能じゃなかったのかな?」
最初に状況がおかしいと気づいたのは馬岱であった。
一度部屋に戻り馬超に遅くなることを告げようとしたのだが、文官はそれを拒んだ。

第一丞相がそんな理不尽な量を下っ端文官に託すはずがない。
嫌な予感がして部屋に戻った時に、馬休の抵抗する声を聞いたのは馬鉄が連れられてから1分程後の事だった。

馬休を押し倒してた男を殴って気絶させ、そして馬休から馬鉄のことをきき馬超を呼びに行き、4人で彼のことを探し始めた。
その間に馬超は馬休を押し倒した男を殺した。


「実は、叔戒の方は3人だったんですよ。私も彼に言ったのですが、今思えば…3人押さえ込まれてしまえば逃げるのは不可能ですよね。」

理由はそれだけではない。
後から見つけた物だが、おそらく叔戒は体の自由を奪う薬を使われていた。

一応相手も、彼の抵抗を警戒していたのだろう。

「………馬超殿も気をつけてくださいね?」
「………俺を襲おうとしようとするのは貴公くらいだ。」
頬杖をつきながら馬超は呆れたような口調で話した。

「だから、気をつけてくださいと言ってるのですよ従兄上。」
「まぁ最も気をつけるべき人物は、一番身近にいるかもしれませんよ?」


「………」



馬超を挟んで火花を散らす趙雲と馬岱。

馬超はアホらしい…と、部屋から出て行ってしまった。








ずっと…
ずっと俺が休を守っているかと思っていた。

だけど…


お前が俺を守ってたんだな
自らを犠牲にして




その真意を知るのはもう少し先の話。



END




あとがき


これ書いたのって実は1ヶ月以上前なんですよね。とある眠れない夜に布団の中でカチカチカチカチ携帯で打ち込みました。
あとから読み返してみると、何がなんだかわからない小説に。アップすることを悩んだのですが、せっかく打ったので、2〜3ページ追加してアップすることにしましたヽ(´ー`)ノ

【最初】まぁ未遂のところで趙雲がきて…→【しだいに】……指くらいなら→【結局】あ、ごめん馬鉄。いれさせちゃった…
馬鉄は当サイトが誇るネコとなってくれるでしょう(笑



下に後日談↓












・・・・・・・・・・




「え?」
趙雲は後日部屋に訪れた馬鉄が言った言葉をきき目を丸くした。

「だーから、休とはまだしてない。」
「……しかし、あの時最高のチャンスだったのでは…」
すると馬鉄は首を横に振った。

「……俺もそう思ったんだけど。」


やはり馬鉄は馬超とは性格は似ていないな…と趙雲は思った。もしかしたら馬休の方が馬超に近いのかもしれない…とも感じた。

「頼むぅぅ一度攻めの方やらせてくれぇええっ」
「…………」
呆れた趙雲は腰に腕を回した馬鉄を引き摺ったまま、鍛練場へと向かった。