この絵文から続いています





「何の冗談?」
曹真は覆い被さってきた男を見上げ尋ねた。
冗談か冗談じゃないか聞かれたら今の子桓の目は後者である。
もっと早く気づくべきだった。だが普通に考えて、こんなことが起きるなど誰も思わないだろう。

「あっ…何?もしかして最近相手が居ないから身近に居る俺で済まそうとしてる??……もぅ子桓ってば酷いなぁ……」
アハハ…と笑いながら曹真は曹丕の手から逃れようとした。だが強く押さえつけられた手首はなかなか動かない。

「…子桓っ、離せって!」
曹真の顔から笑みが消えた。
あるのは焦りだけである。

曹丕は普段から口数が少ない方だ。だから今の曹丕はある意味で普通通りでいつも見てきたはず。
でも何かが違う。


「……っ……!」
「ふっ……流石の子丹でもこれでは余裕がないのか。目が本気で焦っている」
やっと言葉を発した子桓。その顔はいつも通りの顔に近く、曹真は僅かであるが安堵する。

「おい…、俺そんなに時間ないんだからふざけないでくれよ」
「……」
「子か…」



父が死んで
この場所に招かれ
本当の兄弟の様に育てられてきたこの十数年。

初めは無愛想なこの男と共に生活するのは苦痛でならなかった。
だけど何時しか、養父の様に天下を掴み取ろうとする子桓を支えてやりたい…と思うようになった。

どうなのだろう
本当は俺もこんな形を望んでいたのだろうか?




「っ………」
下部に触れられた曹真は声が出ぬよう下唇を噛む。

どうやら曹丕はその行動に少し感情を高ぶらせたようだ。
その証拠に、口元が少しあがった。


「声を我慢されると無理やりにでも出させたくなる」
「俺子桓が普段抱いてるような可愛い子みたいな声絶対出せないからやめといた方がいいよ」
「そんな声を出されたら抱く気が失せてしまうな」
笑いを含みながら男は言う。

戦場で何回か男を抱いたことはあるが、まさか自分が抱かれる側になるとは思わなかった。


驚きはしたが、いざ行為が進むとあっさりと受け入れられるものだ。
それは子桓が優しくしてるから…と言う理由が大きいだろう。

本当に不器用な奴だ
もう少し人と心を打ち解けられるのなら支持をする人が増えるだろうに。

曹真はそんな事を思いながら、曹丕の肩に腕を回し、少し寂しさを感じる快楽を受け入れた。







「…この前の報償、また兵たちに配ったと聞いたが本当の話か?」
「………んー…まぁ。兵卒の人たちって家族を養えるだけ貰ってないじゃないか。少ないけど少しでも足しになればいいかな…って思って」
寝台の上で寝転がりながら曹真は怠そうに答える。
そもそもこの話が事の始まりだったのだ。


「ていうか、物欲と性欲は別物だと思うんだけど?」
何故お金の話だったというのにこうなってしまったのか…という話の結論を簡潔に言うなれば“考えるだけ時間の無駄”という言葉に限る。
もしくは“子桓だから”
とりあえず、そんな感じだろう。

「……ふん。そんなもの同じだろう?」
「酷いなぁ。俺が物と同じだっていうのか?」
少しむくれた表情で曹真が言うと“勘違いするな”と曹丕は言った。


「対象者に対し特別な想いを抱いたからこそ、其処に性欲が芽生える。性欲のみが芽生えることはまずない。」
誰でもいいのならば“それは欲ではない”と曹丕はいう。



「……よくわからないけど、とりあえず子桓は俺にその“特別な想い”を抱いていたから抱いたって事か?」


「あぁ、そうだ」
「………」
随分とあっさり返事をされ曹真は思わず苦笑いしてしまった。


この後約束をしている陳羣たちは曹真が曹丕の部屋にいるのを知っている。
あまり遅くなればここに足を運ぶのかもしれない。
だがそれを言ったとしても答えを出すまで帰す気はないのだろう…。
曹真はそう思った。


今のこの状況を目撃し、陳羣が呆れる姿が目に浮かぶ。


「本当に困った義兄だ……」
もしかしたら拒否権が無い方が相当楽なのかもしれない。
拒否することを許されている曹真はため息をつき、近くに置いてある果物の入った皿の中から野いちごを選び取り、口に運んだ。



END

・・・・・・・・

突発的すぎ(笑)
迷走中の魏キャラの中でとりあえず真っ先に浮かんだCPです。
さて次は学パロでも絡ませてみましょうかな


20100510