薄暗く冷たい部屋。
聞こえるのは水音と男の呻き声。

「っくぅ……ぁ…ぁ」
男は右手を吊され、もう片方の手も逃げられないようにしっかりと拘束されていた。









繋絶

劉封→劉備前提:劉封×関平


一通り行為が終わると劉封は関平の中から自身を抜く。それと同時にドロリと関平の中から彼が放った白濁が零れた。

何度目だろうか。
もう覚えていない。

無理やり犯されて気持ちがいいはずなんてない。感覚なんて随分前から全く無かった。

繋がれてる腕も劉封の欲望を押し込まれている箇所も…


痛いのは







心だけだ。




「ああ゛あ゛あぁあああっ!!」
劉封が狂ったように叫ぶ。
壁に向かい腕を強く叩きつけ行き場のない痛みを発散させようとしていた。


今彼は苦しんでいる。
それなのに何も出来なくて心が痛い。
関平はそう思い唇を噛み締める。僅かに血の味がした。


「………なぁ…なんで泣かないんだよ……。お前そんなに強い奴じゃないだろ?」
虚ろな目で劉封は関平に問う。
「せっ…拙者は泣かない。劉封の方がずっと苦しんでいるから……」
「はぁ?なに言ってんだよ。あの髭の影で満足してるお前より某の方が劣ってるっていうのか?」
違う…
そういうことじゃない。

「……劉封。拙者もわかる………父上にもし見捨てられたらどうしようもなくなる。もしかしたら劉封と同じことをするかもしれない」
「っ!!」
「……………だから、今はそれで劉封の気が紛れるんだったら拙者は何をされても……」
「……………ふざけるな。全部知ってたのかよ…」

関平は劉封の震えている声に驚き顔をあげる。
その瞬間彼の拳が顔を掠った。


「……………っ…なんでだよ」
「劉封……」
彼は泣いていた。





ここまで酷くは無いとはいえ、こんな事は今まで数回あった。それは全て劉封の養父である劉備と何かあった時と決まっていた。

しかし今回のは異常だった。
押し倒すことはあっても繋ぐことなんてなかった。

そしてこの涙だ。

彼に一体何があったというのか。


「…ごめんな平にいっぱい迷惑かけた……沢山酷いことをした。」
「…劉封?」
いつもの劉封だ…。
あんな狂気に支配されてしまった彼ではなく、何かと自分を気遣う彼だと関平は気付き少し安心した。
しかし…次の言葉をきいて頭が真っ白になってしまった。



「…………さっき…諸葛亮達が話してるの聞いたんだ。」





―――某は処刑されるって





「え……」
劉封の言葉に関平は息をのむ。冗談にしてはたちが悪い。
彼が処刑される理由なんてない

理由なんて…


「……」

理由はある…
それは以前父上が言っていた。嫡子が出来てしまった以上養子である劉封はいずれ邪魔者になってしまう…と。
しかし劉封は家督を継がないと言っていた。だからこの問題は終わったと思っていた。


しかし………



「なーんてな?」
「えっ……」
突然劉封の表情が変わる。

「いやぁ、またあの髭に父上を寝とられてさ。その腹いせ。驚いたか?」
「…劉封、言っていい嘘と悪い嘘があるって知ってるか?」
「うわ…平くん目が怖いっ。」
そういいながら劉封は長々と関平を繋いでいた鎖を外した。


「どうだった縛りプレイは?病みつきになりそう?」
そんなことを笑いながら言う劉封の頭を関平はとりあえず一発殴ってやった。

「…本当にごめんな、明日何か詫びるから。許してくれ」
劉封は手を合わせ関平に頭を下げる。関平はうーん…と悩む。
「じゃあ、明日拙者の鍛練に付き合ってくれないか?」
そう言われ劉封は唖然とする。
と言うのは何時もと変わらないからだ。頼まれなくても普段から一緒に鍛練をしている。

「…平って…本当に欲がないよな」
「普段の劉封が拙者は一番好きだから。」
「………可愛いこと言うと、もう一回酷いことするぞ?」
薄笑いを浮かべながら劉封は関平の頬に唇を落とした。








次の日、朝から騒がしかった。劉封との約束まであと1刻ほど。少し早めに行って彼を起こすのがいつもの流れだ。

関平は騒ぎなど気にせず劉封の部屋へと向かった。
しかし、気にしたくなくても気になるほど人は増えていく。

次第に何故これほど人が集まっているのか周りの声でわかってしまった。
「っ!!」
自分の横を一人の男が駆けていく。それは自分が知ってるより昔から劉封を知る人物。
一瞬だったが、それでもよくわかる程男の顔は青ざめていた。
人の波を掻き分け男は前へと進む。



「劉封っ!!」



叫ぶ男の声。
それを聞いて関平も人の波へと飛び込んだ。

向かおうとした部屋の扉は既に開いていた。
中には今駆け込んだ男・趙雲の他にも重役が既に集まっていた。

「どうしてっ………。」
趙雲の手や服は抱き抱えている彼の血液により赤く染まっていった。
目の前の光景は事実なのだろうか?
そう考えているうちに関平の頭は真っ白になってしまった。


「関平、下がりなさい。……残念だが彼はもう…」
「父上…っ。劉封は…誰かに」
問いに答えず関羽は関平を部屋から出した。









劉封は自害した。




そう伝えられても納得出来る筈がない。



―――某は処刑されるって









なーんてな。
いやぁ、またあの髭に父上を寝とられてさ。その腹いせ。驚いたか?

本当にあの時劉封は笑っていただろうか……。

あの時拙者がちゃんと劉封の状況に気づけば


こんなことには……




あの時あの場にいる人たちの目がとても怖く感じた。



父上でさえも…







いつか…

いつか自分も同じことをされるのだろうか。
養子である以上避けられない道なのかもしれない。

もし劉封が帝となったのならば内乱が起きるだろう。しかし彼はそれがわかっているから帝にはならないと皆の前で言った。


劉封は殿に愛されたかった。
ただそれだけだったのに




「何故殺されなければならないんだっ………」

やりきれない気持ちを関平は壁へと向ける。あの時劉封がそうしたように…。


例え劉禅が帝となったとしても恐らくこの国は亡んでしまう。
劉封の訃報をきいて皆の前では悲しんでいた劉禅が影で笑っている姿をみて関平はそれを確信した。





劉備の没後劉禅が玉座につくと、関平の思惑通り蜀は滅亡の道へと進んでいった。

その時、家臣や兵たちは口々にこういった。

あの時劉封が自害などせず、彼がこの国を治めればこんなことにはならなかった……と。


それを聞き気づいた。


劉封だけではない。
この人たちもまた、あの暗殺の被害者なのだと。


そんなやりきれぬ思いを胸に抱き青年は戦場へと駆けた。


END



だいぶ昔に描いた絵の小説です。書きかけ(最初の5行くらい)だったのを発見し手を加えてみました。
難しいですね劉備の呼び方。
劉備殿
劉備様
殿
陛下

んんー??どれだ??

関平が滅茶苦茶延命しております。きっと馬超とかもまだ生きてたり。
実際劉封が帝になったらどうなるんだろう??多分劉禅より早く壊滅しそうですけどね(x_x;)
殺されるとき「平…ごめんな」とか呟いてたということで。
というか劉封サイドもちょっと書いてみたいかも(需要なんてないだろうけどなんとなく)
また死ネタですみませんっ。だけど次upする予定の小説も死ネタ…かも…です。

2009/05/27