わたしにはわからないのです
貴方が何故わたしに抱かれるのか…

俺にはわからない。
あんたがなんで、素直に俺を抱くのか…



貴方が好きなのは
お前が好きなのは



馬休殿のはずでしょう?
兄貴のハズだろう?



contradict―――
Another Story
趙雲×馬超 馬鉄×馬休前提
趙雲×馬鉄






「どうしたの?休」
「……え、あ……」
悩むなんて珍しいな。と休は俺の顔をのぞき込んだ後、隣に座った。

「……いや、なんか違うっていうか…」
「何が?」
それを言えたら苦労はしない。


気づいてしまった矛盾点。
何故子龍は兄貴を好きなのに俺を抱くのだろうか…。
それは自分も同じことだ。

休が好きなハズなのにずっと子龍に抱かれているのか。


「………」
子龍は善意として俺に付き合ってくれている。しかし俺は………








「なぁ…休。好きってなんだろうな?」


「好き…か。僕は鉄と岱と兄様……が好きだな」
嫌いなのは趙将軍。

人差し指を顔の前に立て「ないしょだよ?」と、言った休があまりにも可愛くて思わず赤面してしまった。

「………なんで子龍のことが嫌いなんだ?」
理由がわからない。子龍は外面が誰よりもいいはずだ。
休に対しても優しくしている。


俺の問いに休は寂しそうに



「僕から鉄をとったから……」
と言った。





頭の中が真っ白になった。
今の休の言葉は……


「っ………鉄?」
気づいたら隣に座っている休を押し倒していた。
勿論休はとても驚いている。


「っ…休が悪いんだからな。…そんなこと言われたら俺…」

……


その次の言葉が出てこない。
あれ…?俺休にどうしたいんだっけ?


「………鉄……」
「っ……ごめんっ」
俺は休の上からどいて、そこから逃げた。


本当に……




情けないな








・・・・・・・・





「なんか…俺子龍みたいに上手く出来る自信ないんだ……」
「………互いに好きであれば、上手い下手なんて関係ないですよ。」
情事後、布団の中で子龍に今日のことを話した。

「……やめますか?私とこういうことをするのは」
「……………」
突然の子龍の提案に俺は口を閉ざす。

「私と比較してしまうでしょう。それは貴方にとってもいいことではないですからね。」

その子龍の言葉をきいて思った。
互いにこの関係をやめるきっかけが欲しかったのかもしれない。
好きでもない相手と、こんなことをするなんて本当はおかしな話だったんだ。

なら今がその絶好のチャンスだ。

「そう…だな………」
「互いに頑張りましょう」

これ以上体を重ねたら気づいてしまう。
これ以上体を重ねたら……
戻れなくなってしまう。



だから



これが最後のレッスン




・・・・・・・・・




「兄貴、子龍っ」
「鉄に休、どうしたんだ二人揃って。」


あれから一季節。
子龍と兄貴はよく一緒にいるようになった。
度々子龍の部屋に行く兄貴の姿が目撃されている。きっと、うまくいってるのだろう。

「休も槍覚えたいんだってさ。俺は細剣と盾の方がいいと思うんだけどさ」
「まぁ…そうですね。槍を扱うには筋力が足りない感じはしますね」
「でも、本人がやりたいならいいだろう。休に合う槍を俺が見つけてやる。趙雲殿、一緒に探すの手伝ってくれないか?」
「ええ、もちろん。」

子龍に対する警戒心は兄貴からなくなった。それを岱はとても嘆いていたが、どうしようもないことだとも言っていた。




その夜、俺の部屋に子龍が訪れた。
兄貴が諸葛亮に呼ばれており、見つけた槍を渡すことが出来ないから代わりに届けにきたそうだ。
まぁ肝心の休は今岱と執務室にいるため不在なのだが。

「あ、これなら休でも持てるかも」
子龍の持ってきた槍は俺たちが使ってる物より柄が幾分か短くなっていた。その代わり先の方の鉄が増えている。

「重さはさほど変わらないけど、振った時のバランスはいいと思うよ。」
「だな。」
気にすることでもないのだが
どうも気になっていた。

兄貴と子龍が今どういう関係なのか



「…………」
「どうかしましたか?」
俺はあの日から何も変わっていない。まだ休とは“仲のいい兄弟”のままだ。

それはこれからも変わらない


気づいてしまったのだ。
自分の気持ちに

「俺さ、ナイトだから」

多分岱も気づいたのだろう。
だから兄貴から手を引いた。


「…………」
「それだけ。まぁ子龍は兄貴と頑張れよ」


騎士の役割は国を、王を、姫を守ること。
それ以上もそれ以下もない。


俺は、休を抱きたいわけじゃなかった。ただ、そばにいて護れればよかった。

だから、俺は休にとって王子ではない。
騎士なのだ。

騎士と姫が結ばれることはない………


「ホント、周りにバレないようにしろよ?最近の二人、急接近し過ぎて、怪しんでる奴もいるから」
知っている。
子龍にそんなことを言っても無駄なのだ。逆に喜ばせるだけであろう。

「………叔戒は、何故馬超殿と私が仲良くなったのか知ってますか?」
子龍はわかりきっていることを聞いてきた。
本当に今更過ぎてため息が出そうだ。
「そりゃ、兄貴と子龍が「わたしが、“ずっと、良き友人でいましょうね”と言ったんです。」


良き…友人?


じゃあ…まさかだと思うけど

「兄貴とヤってないのか?」
「ええ。」
「じゃあ、兄貴は頻繁に子龍の部屋に行ってるのはなんなんだよ」
「あれは、ただのお喋りですよ。上に立つものはやはり色々と苦労しますからね。」

意外だ…
あんなに兄貴のことが好きだったのに……

意味がわからない。


「わたしも一つききますけど、どうして私に抱かれてたのですか?」

随分と直球な質問がきた。
だけどそれは、ずっと俺も疑問に思っていたこと。
「それだったら何で子龍だって兄貴が好きだったくせに俺を抱いてたんだよ」

この数ヶ月、ずっとききたかった……
なんか気持ちがモヤモヤしてどうしようもなかった。


「それは、貴方が頼んできたからですよ。」
「断ることも出来ただろ?」
そういうと子龍は困った顔をしながら笑う。
「叔戒は馬超殿と似てますからね。私もいい思いができるじゃないですか?一石二鳥って奴です」
始めにいいませんでしたっけ?と彼は言う。
確かにそんなこと言っていたような気もした。


「………俺は…」
何故子龍に抱かれていたのだろう。
確かに始めは休とそういう風なことをする時、下手くそだと思われ嫌われたくないからだった。


「もう一つ話をしていいですか?」
俺の隣に座り、子龍は何かを思い返していた。

「……前に、叔戒が輪姦されてたことがあったでしょう?」
「……あ…ぁあ。」
出来れば思い出したくない過去。子龍はそれを思い出していた。

「あの時、わたしは貴方に怒りを感じてた。」
「っ俺に?」

きっと歯車が狂ったのはその時…

一度狂った子龍の歯車はそこから更に狂い続けた。

「叔戒…?私が触れてない3ヶ月間………誰かにこうされたりしましたか?」
「ちょ…子龍??」
突然押し倒され、俺は少し焦った。だが、自然とそれを受け入れてしまう。


「………あ、」



そうか、何がおかしいか気づいた。

俺が、休のことを護りたいだけだったという感情に気づいただけでは綻びは全て無くなっていなかったんだ。

「誰か他の人に可愛らしく鳴く声を聴かせましたか?」


俺は


「子龍に抱かれたいから…抱かれてた」

どうして気づかなかったのだろう。休を抱く時の練習とかこつけて、本当はただ子龍に抱いて欲しかったんだ………

「叔戒、質問に答えてください」
「―――――!!」
今のっていいムードぶち壊しってやつじゃないのか?
自然と出てしまった言葉をさらりと交わされ冷たい言葉を浴びせる子龍。

「………なら、体を確かめればいいだろ!!」
売り言葉に買い言葉。
俺は子龍を睨みながら言った。
それをみて子龍は笑う。


「自慰行為すらわからなかった叔戒のことですから、だいぶ溜め込んでるのでしょうね」

全部出してあげますよ

と、言って子龍は下半身へと手を伸ばし布の上から、熱くなり始めた部分を触る。

「っ………、バカっ。今ここでかよ!」
いつ休が帰ってくるのかわからないこの状況。
俺は慌てて子龍を止めるが、こうなったコイツを止められないことは当の昔に知っている。



次の日、部屋に帰ってくることのなかった休+兄貴+岱の冷たい視線を存分に浴びることになってしまった。

そのまま俺は休に部屋を追い出され、まるで捨てられた子犬を拾うがごとく子龍に拾われた。今は子龍の部屋に寝泊まりしている。


追い出された時一瞬休が寂しそうに笑った。



―――僕から鉄をとったから



その時ふと思い出したのは何か違うと気づいたあの日の言葉。
休はきっとあの時もう気づいていたんだ。




contradict―――

長い間俺は霧の中をさまよい続けた。
先にその霧を抜け、ずっと待っていた子龍。

立ち止まってしまった俺を待ちきれず
また霧の中に飛び込んで俺の手を掴んでくれた。


その瞬間霧は消え去った…
過去の想いと共に。


趙鉄で一つの物語を終わらせてみました。一応前回のSSと繋がっています。 なんかわからないけどやっぱりオリキャラは扱いやすい(o^_^o)
馬鉄・馬休に関しては色んなストーリーを考えていて、どれを書こうか悩んでいます。

すでに複線は小説にいれてたり。。
さぁてお風呂あがって、また雀無双やりますかっ

2009/1/29