赤ピンク白でごてごてにデコレーションされた見てるだけで胸焼けしそうになる物体を嬉々として眺めるこいつとは日頃凍てつく云々いってるのとは別の意味でお近づきになりたくない。しかし子供のようにストロベリー・パフェにスプーンを差し入れるこいつの目の前で、胸焼けを押さえながら眺めるというこの事態を招いたのも間違いなく俺なのだ。

ぐじゅ・ぐじゃ・ぐちゅん。お世辞にも美味しそうとはいえない音をたてながら風介の手に収まる細長いそれが破壊作業を施す。真っ赤な苺ソースと真っ白な生クリームがランデブーを強制されて無惨なまでに混じりあう。ひとしきり続けられあとにすくい上げられたその上に乗っかっている残骸は綺麗なピンク色をしていた。

「食べるか?」
「いや、いーや」

見つめ続ける俺に勘違いした風介が日頃めったに見かけることのできない優しさと共にこちらに視線を寄越す。ずいと出されたスプーンの上には原型を留めることを放棄した残念な元・ストロベリーパフェが乗っかっていた。甘酸っぱい香りを芳香させるそれからはさぞかし食欲をそそられるだろう、しかし俺にとってはただ胸焼けを増長させるだけでまったくその魅力の恩恵に預かれないので素直に断った。ふうん、と1つだけこぼして俺に向けられた欠片が再び器の中におとされた。違う、違う。俺がほしいのはこんなもんなんかじゃない。

「いただきます」

満足したのか降り下ろす手をいったん止めると、しなやかにスプーンを持ち直し明確な意味を持って掬い上げた。口にすいこまれた奇妙なまでに色鮮やかな物体は咀嚼され淘汰され嚥下される。とたんに俺は先程まであんなに蔑んでいた物体に嫉妬するのだった。俺も、あいつの一部に。そして銀色のスプーンがまた惰性の海に落とされるのを見て、次こそはあの上にのってみせると息を飲むのだった。


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スプーンも凶器に成りうる
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