健康的な男子中学生の脳内ってものは実に不健全だ。思春期だからと言ってしまえばそれまでなのだが、それにしたっては聊か無粋すぎる。と俺の秘蔵の一作を丸めて握り締めながら熱く語ってくれているのは永遠の厨二病、涼野風介くんだ。そして俺、南雲晴矢は只今目の前のこいつにはったおされている。矛盾という言葉を見事に体現してくれている涼野風介くんはそんな俺を満足そうに見下ろして床に広がる髪の毛に指を絡ませた。気色悪い、なんだこいつ。いやまずその手を本から離せ丸まるだろうが。

「薄っぺらい媒体に印刷された無機質にもかかわらず欲情するとは盛りのついた犬とかわらないじゃないか」
「それとあんまかわんねえだろ」
「馬鹿か貴様は犬と人間が同じなわけないだろう」
「馬鹿はお前だ例えっていう言葉を知らないのか」

ああいえばこういうというのはまさにこのことか。レベルの低い言葉の応酬の節々には拭いきれない苛立ちが混ぜられていて絶妙に刺激してくるもんだから居心地が悪い。何に苛ついてるのは知らないし知りたくもないけど、健全な男子以下略の生理的欲求に対する不満全般をなんで俺が一身に受け止めなければいけないのか。

「何が気にいらねぇの?」
「君がそんな恥じらいもなんにもなくただ金のために足を開き下品な仕草に身体を売る売女に熱をあげていることだ」
「お前も思春期なんだしエロ本の1冊2冊持ってたっておかしくねーだろ」
「そんなものもっているわけないだろう」
「は?」

ふふん、と鼻をならして胸をはる涼野以下略くん。いや威張れるところじゃないですからね。どや顔しまってくださいね。

「私は生憎愛する人にしか起たないものでね」
「へーへー一途なこって。言っとくけどな、男である以上なんとも思ってない相手に反応するのも自然、な、こと……」

え、と情けない声が漏れる。いやいやちょっとまて。愛する人にしか、起たない?

「あのー風介さん、なんかさっきからかたーいものが当たってるんですけど」
「当てているんだ」
「ですよねー」

さっきの言葉と現在の状況をドッキングさせると、導き出せるのはひとつしかない。いやいやそんなまさか。否定するように揺れる俺の頭にあわせてぐりぐりと腰を密着させてくる涼以下略。やめろ、と思いつつも咎める言葉が浮かんでこない俺も大概だ。そんでもって嫌だと思わない自分がいるだなんて、そんな。

「まじかよ……」

握られていた本がようやく床に下ろされる。近づいてくる風介の顔をぼんやりと眺めながら、明らかに丸まって通常の形をしてない本の処分について考えるのだった。






---
1000ヒットお礼リクエスト小説でした。悠様大変遅くなりました上にこのクオリティで本当に申し訳ないです…。
「普通の中学生やってるガゼバン」とのことでしたが、中学生やってるなら風介と晴矢かな?と思い変更させていただきました。そして私の偏った知識では普通の中学生のつもりがただのエロ本所持晴矢とそれに噛み付く風介になってしまいました。重ねてお詫び申し上げます。しかし愛だけは詰まっておりますので!
悠様ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -